読む快楽

活字中毒患者です。朝15分読まないと起き上がれない。最低1時間読まないと眠れない。夢中になって読んだ本を教えずにいられない。おもしろい本、 常時募集中!
「モンテ・フェルモの家」
ナタリア・ギンズブルグ著
須賀敦子訳
ちくま文庫

 一気に読み終えました。教えてくださってありがとう>Matsunoさん。
同じ著者・訳者の「ある家族の会話」もすばらしい作品・すばらしい訳なのですが、こちらもすばらしかった。
 60年代、モンテ・フェルモ(不動の山、という意味)にあるマルゲリーテの館に集まっていた若者たちが、中年になって自由奔放の生きてきた青春時代の代償を払いながら生きていく、と、簡単にいってしまえばそういう内容の小説です。
  書簡集で書かれているので、人間関係が最初つかみにくい。何人もが複雑に関係しあっていて、感情も絡み合うのですが、キーワードは「モンテ・フェルモの 家」です。彼ら彼女らが青春を送ったその場がずっとありつづけるはずだったのに、がらがらとくずれていってしまう悲劇が描かれます。
 主人公は2人の男女。
 イタリアでの生活をすべて捨てて、ローマの家も売って、アメリカの兄のところに身を寄せようとするジュゼッペ。
 マルゲリーテの館で暮らしているルクレティアは、ピエロという夫と結婚生活を送り、4人の子どもをもうけているが、ジュゼッペと一時期愛人関係にあったという女性。
 2人にからむのが、ジュゼッペが誰かに産ませたけれどいっさい面倒を見なかった息子。ルクレティアと不倫する男。その男の愛人。みんなの面倒を一手に引き受ける母性愛に満ちた女性。
 ほかにもいろいろ出てくるのですが、全員が「ここではないどこかに自分の居場所があるはずだ」と思いこんでいる。それが悲劇の元凶です。
 ジュゼッペはそう思ってアメリカに行くし、ルクレティアはそう思ってモンテ・フェルモを捨ててローマに行く。
 でも、どこにも彼らの居場所はないのです。
 居場所をつくるんは「家」という物理的空間ではない。
 「家族」という関係性でもない。
 どんなに退屈であっても、わずらわしくても、自分で「居場所」をつくって、そこに責任を負わねば「居場所」に落ち着けないのです。
 でも、いい歳をして誰もそれに気付かない。というか、気づきたくない。
 読み終わって、なんだかとても哀しくなりました。
 デラシネ、という言葉が浮かびました。

 読後、どうしても須賀さんの翻訳がもっと読みたくなって、また「マンゾーニ家の人々」を引っ張り出してきています。
 ナタリア・ギンズブルグも、イタリアの詩人のサハも、ユルスナールも、須賀さんがいなければ私は知り合えなかった。
 あらためて須賀さんのすごさを感じました。

夕飯は豚汁、ほうれん草のたまごとじ、お寿司

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motoko
 人生でたいせつなものは本とサッカーと料理とファッションに教えてもらった、などと言ってみたいモノカキの日常

PROFILE

 職業はモノカキ/翻訳業。書いていきたいテーマは「女」「子ども」「衣食住」。得意技はなんでも一晩寝ると忘れること。
since2000.5.19.
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