読む快楽

活字中毒患者です。朝15分読まないと起き上がれない。最低1時間読まないと眠れない。夢中になって読んだ本を教えずにいられない。おもしろい本、 常時募集中!

今日、書評原稿を書いていて、「訳者あとがき」に

「最近は翻訳調(というのがあるとすれば)がとみに嫌われるようだが、本書の性格からあえて「日本語らしく」しなかった部分もある」

と書かれているのを読んで、ん? と思った。

というのは、その本の訳は秀逸で、「翻訳調」で「日本語らしくない」部分に、すごく味があったから。嫌われるんですか、そこが? 

という本は

「厨房の奇人たち」

ビル・ビュフォード著 北代美和子訳

白水社

うん、とても楽しかったし、こういう言い方は誤解を招きかねないけれど、とても勉強になった。知らないことを知る楽しみを与えてくれる本はいいね。著者の行動力に引きずられて、これまで「知ろう」とも思わなかった世界をのぞけるのがありがたい。さすが『フーリガン戦記』の著者だ。

読み終わって、すごくトクした気分にさせてくれる。自分も一緒になって、著者と一緒に、NYの厨房で汗水たらして兎やら鴨やらをさばき、ワインをラッパ飲みし、トスカーナの山奥の質素な、でも実はとても豊かな食卓に座った気分にさせる。

どんなシーンを描いても、その場の「空気」が感じさせるのがうまい訳だ。これ、ビュフォードさんの文章がうまいだけじゃないと思う。翻訳に空気を伝える力がある。

そういう本であり、そういう訳。

で。

翻訳された本を読む楽しみは、いつも自分にまとわりついている(まとわりつかれるのがいやだっていうんじゃない)ものとはちがう「空気」を感じることにある、と私は思っている。

その「空気」を感じさせるのが、ひとつには「翻訳調」じゃないかとときどき思うのですね。

あまりにもひっかかりのない日本語になった翻訳文って、ちょっとちがう気がする。

日本語と外国語の間に横たわる深い溝を、ときどき垣間見せる(感じさせる)ほうが、歯ごたえがある。だって、溝を超えてどちらか土俵に引きずり込んでしまったのなら、翻訳を読む楽しみが減りませんか? ま、それは私だけかもしれないけれど。

自分に向かって石が飛んでくるのを覚悟の上でいわせてもらうと、世の中には「翻訳調」どころか、「翻訳」までもいたっていない本もいっぱいとはいわないけれどあって、それを読んだ人が「あ、これ翻訳調だから読みにくい」とか思っていたら困るなあ。

コメントする

新刊&セミナーのお知らせ

新刊 「クリエイターになりたい」

女の子のための仕事ガイドシリーズ 第8巻
文章、絵、音楽、コンピューターの4分野にわたって、それぞれにかかわる仕事をインタビューと「どうすればなれるか?」の2本だてで紹介しています。一流の仕事をしている(もしくは志している)女性たちの言葉は、きらきら輝いています。写真が増えて、ますます読みやすくなりました。中高生向けですが就活の大学生にもぜひ読んでもらいたい。

新刊 「天才シェフ、危機一髪」

キンバリー・ウィザースプーン/アンドリュー・フリードマン編
実川元子・松野泰子訳
日経BP社
「世界一流レストランの舞台裏で起きた40の本当のお話」というサブタイトルが示すとおり、今もっとも輝いているレストランのカリスマシェフたちが経験した、厨房でのトンでもないエピソードを集めたコラム集。客の立場ではうかがい知れない一流レストランの裏のドタバタぶりを知ると、レストランに行くのがもっと楽しくなるかも?!おいしいレシピも必見!

新刊 「サウンド・バイツ」

アレックス・カプラノス著
実川元子訳
"Take Me Out"で2004年に世界的にブレークしたスコットランドのロックバンド、フランツ・フェルディナンド(バンド名は、響きがよいから、という理由で、サラエボ事件で暗殺されたオーストリア皇太子の名前をつけたとかいう)のヴォーカル&ギターのアレックス・カプラノスが、ワールドツアーで食べたものをつづったエッセイ。

新刊 「巨乳はうらやましいか? Hカップ記者が見た現代おっぱい事情」

スーザン・セリグソン著
実川元子訳
早川書房
1470円(税込)

新刊 「受けてみたフィンランドの教育」

実川真由・実川元子著
文藝春秋
1600円(税込)
motoko
 人生でたいせつなものは本とサッカーと料理とファッションに教えてもらった、などと言ってみたいモノカキの日常

PROFILE

 職業はモノカキ/翻訳業。書いていきたいテーマは「女」「子ども」「衣食住」。得意技はなんでも一晩寝ると忘れること。
since2000.5.19.
カウンタ