「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」
町山智浩著
文藝春秋
かなり話題になっている本なので、いまさら感があります。が、ちょうどオバマ氏勝利演説直前に読み終わったので、感慨さえおぼえました。
アメリカが世界中を巻き込んで暴走してきたこの8年ほどを振り返って、どうしてこうなっちゃたのかね、ということをアメリカ在住の著者が語ります。大型トレーラーのようにアメリカを暴走させたのは、歯止めのない新自由主義経済だけではなく、それをうまいことかつがされたブッシュだけでもなく(でも、先頭に立って旗を振っていたのは彼だけれど)、実は聖書に書いてあることは120%真実と言い切る信心深い善男善女だったり、生まれた地に足をつけてカントリーウェスタンをやって、外の世界に対していっさい関心がないことを誇りにしている人たちだったり、またそういう善男善女(っていうのが一番始末に負えないのは世の常)を利用するハイエナたちだ、ということが、さまざまなエピソードとともに語られます。
語り口は軽妙洒脱で、例に挙げられるトピックス(たいていはスキャンダル。でもたぶんアメリカ人は醜聞どころか美談だと思っているような話)もおもしろい! でも、章を読み進むごとに背筋が寒くなります。
とくに御用聞きメディアの偽善を暴いた「ウソだらけのメディア」はぞっとしました。私もときどき(「アニメとオッパイで稼ぐ」)FOX見て、ふーんなんておもしろく読んでいたりしたから。
ブッシュ自身ではなく、ブッシュ的なものに共鳴し、ブッシュをかついでいた人たちと、それにNOを突き付けた人たちの間には、はたして深い溝があったでしょうか? 溝はもちろん対立さえもなかったのではないですか? ブッシュをかついだ人と、オバマと一緒に「Yes, We Can」と叫んだ人たち、そのちがいはどこにあるのか? 「なんでもかんでも債権化するビジネス」が破たんした波をかぶった人と、うまいこと泳ぎ抜けた人、というちがい? 少なくとも、4年前にブッシュの再選を許した時点で、アメリカの何かが崩れたのだ、ということをこの本を読みながら痛感しました。
それでも、オバマ氏という人物が出てきたこと。差別される側、持たざる側にいた人に国の指揮を任せるということ。その点ではアメリカがうらやましい。
政治「家」が世襲制であることが当然の国には、ロクなことがない、というのも本書を読んで痛いくらい感じましたからね。
少なくとも、アメリカは断ち切らなくてはならないものを勇気を持って断つ、ということを遅ればせながらにもやったのではないかと思います。
もうね、私は2世にうんざりなんですよ。タレントでも、アスリートでも、ミュージシャンでも、アーティストでも、ポリティシャンでも、自分の力で這い上がってきた人がなってほしいです。




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