読む快楽

活字中毒患者です。朝15分読まないと起き上がれない。最低1時間読まないと眠れない。夢中になって読んだ本を教えずにいられない。おもしろい本、 常時募集中!

新刊が出ました!

「英国のダービーマッチ」

 

ダグラス・ビーティ著

サイモン・クーパー序文

実川元子訳

白水社

2700円+税

 

サイモン・クーパーが書いている序文にこんなくだりがあります。

「ビーティのこの本は、サッカーについてだけでなく、英国という国を描いている。細い通りを歩いていくと、必ずと言っていいほどサッカースタジアムに行きあたり、もうしばらく歩くとまた別のスタジアムがあり、サッカー以外には何もない、魅力にとぼしい英国の地方都市について書かれた本である」

スカパー! そのほかでサッカーの実況を担当している倉敷保雄氏がこんな帯を寄せてくださいました。

「ひとつの街にあるフットボールのライバル関係を知ることは、絵画を鑑賞する手助けのようなものだ。

ご当地のパブに入って一杯奢らないと教えてもらえない情景がたっぷり。

パブを20軒はしごしたくらいの価値はある」

ビーティは「あとがき」でこんなことを書いています。

華やかさの陰で進行するスラム化という英国サッカー界の現状は、本書で取り上げた街(訳者注:8つ。マンチェスター、リバプール、グラスゴーなど)が今世紀初めからマネーの主戦場となっていることを反映している。英国の街には、常時、驚くほどのマネーが投資され、再開発が投資のさらなる過熱を招き、新しく化粧直しした姿が経済的繁栄と復興を象徴するものとなった。街は大々的PRを繰り広げてブランドとイメージの再編をはかった。

 サッカーは街のそんな復興計画を推進する資源としてぴったりだ。(中略)地元のサッカークラブが成功することで人々はわが町に対してポジティブな感情を抱くようになり、コミュニティ全体が活性化していく。(中略)ファンにとっては応援するクラブの活躍が、街全体を盛り上げることにつながるのだ。(中略)

 それがもっとも単純な形となってあらわれるのが、隣の地域に対して自分たちの地域を「自慢」し、優越感に浸ることができるダービーである。

 だがダービーにはそれ以上のものがある。それ以上でなくてはならない。 

 なぜならダービーはコミュニティを、人々を、アイデンティティを分割するものでもあるからだ

 日本でも地域の名称をとった、たとえば浦和VS大宮の「さいたまダービー」、横浜FマリノスVS川崎の「神奈川ダービー」、川崎VSFC東京の「多摩川クラシコ」(ちょっとこれはよくわからないが)なんていろいろあります。でも、まあ所詮は興行目的という仕掛けの枠組みの盛り上がりであって、本書に見られるようなどろどろしたライバル意識はさほどないように思います。

 このなかで一番ずしんときたのはやはりセルティックVSレンジャースのグラスゴー・ダービー「オールド・ファーム」でしょうか。宗教、経済、住んでいる地域、歴史的因縁、すべてがからみあっていて、そうか、こういうところで中村俊輔はプレイしていたのだ、と感慨深いものがあります。

 それと、リバプールVSエバートンのマージーサイド・ダービーも恐ろしいものがありました。

「英国」という国が一つの物差しではかれないことが、本書を読むとよくわかります。

 日本も同じですね。「日本」と一つにくくってしまってはいけない。ローカルの発想はとてもたいせつだ、とあらためて感じました。

 サッカーを通して自分の住んでいるコミュニティを考える。その手がかりになる本です。

 ぜひ、お手に取ってごらんください!

 

コメント(5)

ピロミ :

元子さん、こんにちは~!
ご無沙汰しておりますが、お元気ですか?いつもブログを拝読しております。

翻訳中から元子さんが「おもしろい!」と叫ぶほどの本、やっと発売ですね♪すごく楽しみです。

自分のクラブのことを考えるとつらいので、この本を読んで現実逃避したいと思います(笑)

motoko :

ヒロミさ~ん! 本は送る手配してあります。ヒロミさんにはぜひとも読んでいただきたいなあと、顔を思い浮かべながら訳した箇所がいくつもあります。
ローカルとフットボール(だけにかぎらずスポーツ文化活動全般)の関係を考えるうえで好著だと思っています。
また感想を聞かせてくださいね!
(それにしてもコメント早っ!)

mie :

こんにちは!
実川さんの本の大ファンです。
何年か前に、ここにコメントを書かせていただきました。
その後離婚したりいろいろあって、しばらく本も読まないような生活を送っておりましたが、やっと落ち着いたので、またがんがん読み始めました。何の因果か、現在娘が「サッカー以外には何もない、魅力にとぼしい英国の地方都市」に住んでいます。この本を買って送ってやろうと思います。

motoko :

mieさん、ちょっと気恥ずかしいけれど、ありがとうございます!
娘さんがお住まいの街はどちらですか?
「魅力にとぼしい」というのは、unlovelyというのをやややわらかめに訳してみました。いくらなんでもunlovelyはないよなあ、自分がフランスに住んでいるからって>サイモン・クーパーと思ったので。
またがんがん読んでいらっしゃる本のなかで、おもしろいものがあればぜひぜひ紹介してくださいね!

mie :

マンチェスターです。学生生活はそれなりに楽しそうです。
街がunlovelyかどうか、ちょっと見に行ってみたいです。


私は「100歳までの人生戦略」におおいに勇気づけられました!
ありがとうございます!

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「英国のダービーマッチ」
ダグラス・ビーティ著
サイモン・クーパー序文
実川元子訳
白水社
英国8都市のライバル関係に
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サポーター、ファンから一
般市民のダービーに寄せる
思いを描きだす。ナショナル
ではかれない「ローカル」
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motoko
 人生でたいせつなものは本とサッカーと料理とファッションに教えてもらった、などと言ってみたいモノカキの日常

PROFILE

 職業はモノカキ/翻訳業。書いていきたいテーマは「女」「子ども」「衣食住」。得意技はなんでも一晩寝ると忘れること。

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