「目くらましの道」
ヘニング・マンケル著 柳沢由美子訳
創元推理文庫
ミレニアム三部作を読了後、なんだかスウエーデンづいてしまって、マイシューヴァルの「笑う警官」を読み返し、題名つながりでヘニング・マンケルの「笑う男」を読み、ついでたどりついたのがこの推理小説でした。
警察小説としては、マイシューヴァルと重なるところもありますが、警察内人事と刑事たちの私生活と事件とをうまくからめている点ではマンケルのほうが少し上手かもしれません。ヴァランダー警部という魅力があるんだかないんだかわからない刑事が主人公というのもいい。ちょっと影が薄いところが、かえってほかの刑事たちの特徴を引き立てます。
「目くらましの道」は、ある意味グローバル化社会の暗部が顔をのぞかす作品で、スウエーデンの片田舎といえども、世界の片隅ではない、ということが伝わってきます。
ネタバレになるからあかせませんが、一気に読み終わったあと、どうにも後味が悪かった。実は下巻の最初のほうでもう犯人はわかってしまったのだけれど、どうかその人ではありませんように、と祈りながら読み切ってしまいましたよ。
「笑う男」と並んで、エンターテインメント性も社会性も十分にある内容です。
寒いのが苦手な人にはやや寒々しい描写が多いので、まず着こんでから読んだほうがいいと思います(笑)
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