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「GILTーITとファッションで世界を変える私たちの起業ストーリー」
アレクシス・メイバンク
アレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン著
実川元子訳
日経BP

 高級ブランドのファッション製品から、リッチなリゾート滞在やゴージャスなディナーまで、格安価格でネット販売するギルト。2007年創業以来、めざましい成長を遂げて、会員を500万人まで増やし、日本でも展開しているギルト・グループの起業ストーリーを、創業者の2人、アレクシスとアレクサンドラが語ります。
 ハーバード大学の同窓生だった2人が再会したのは、イーベイやメリルリンチなどで働いた後、人生を仕切り直したくてハーバード・ビジネススクールに入学したとき。アレクシスは学部時代にアルゼンチンに留学体験があり、アレクサンドラは中米をルーツとしている関係で何回もブラジルなどを旅行していたことから、2人は親しくなります。また2人ともファッション大好き。とくに高級ブランドのバーゲン漁りには、連れ立って何回も出かけました。
 卒業後、アレクシスはAOLを経てIT関連で起業をしようとし、アレクサンドラは大好きなファッション業界(ルイ・ヴィトンからブルガリ)へと別の進路を歩みます。でも、それぞれ挫折を味わっていたとき、共通の趣味だった高級ブランドのサンプルバーゲン巡りをネットで展開しようと起業します。
 最初は彼女たちに加えて、技術担当の男性2人と経営担当1人の5人だった会社は、2007年末の立ち上げから3年半後には従業員900人を抱える企業へと発展。大成功へのストーリーを、2人の女性たちがこれから起業したい人たちへのアドバイスとして語ります。
 才色兼備の2人ですが、成功を手にするまでには周到な下準備を積み重ねます。2007年当時、まだアメリカでもファッション製品のネット販売はほとんど展開されていませんでした。とくに、高級ブランドにはネットへの不信感が強く、価格を下げての販売を説得するためにはたいへんな苦労がありました。説得の決め手となったのは、アレクサンドラの人脈力と、2人の時代と市場を読む眼の確かさです。実際、2008年のリーマンショック時に彼女たちに救われたデザイナーブランドが多くありました。
 起業家だけでなく、日々の仕事にも活かせるヒントがたくさんあります。たとえば、顧客獲得のためのバイラル・マーケティングの手法、人脈作りの基本、資金調達の決め手となるタイミングとプレゼン方法などは、明日からでも役立つはず。
 また成功したビジネス・ウーマンとしてのキャリアの築き方と家庭との両立の仕方(2人とも結婚して子供がいる)も、女性たちはもちろん、イクメンたちにもヒントがたくさん見つかるでしょう。
 私はあまり好きではないお勧め文句ですが、とても「読みやすい」です。それは2人の語り口が、率直だから。奇をてらった表現をしないし、失敗は失敗として素直に書いています。自信があるからでしょうね。それに楽しく読める本です。気軽に手に取ってくださいませ。




GILT(ギルト)
アレクシス メイバンク
日経BP社
2013-08-12