サッカーの試合は一つひとつにドラマがあると思います。 ドラマといっても、すべてわくわくするものではない。凡庸で、ストーリー性がなく、盛り上がりに欠けるドラマも多い。ドラマをすばらしいものにするためには、周到な準備、監督の演出力、演じる人、つまり選手たちが勝利に向けてのイメージや気持ちが共有できているか、観る人も一緒になって盛り上げられるか、そういう要素が必要になります。 そして、試合というドラマを輝かせるもの。それは観る人たちの期待を裏切らないどころか、それ以上の驚きとため息を誘うパフォーマンスでしょう。 J2首位決戦となったガンバ大阪VSヴィッセル神戸戦。 舞台、というかお膳立ては十分に整っていました。 2連勝して波に乗るヴィッセルに対し、前線のタレントを一気に3人失い、それまでの堅守速攻スタイルができなくなってしまって1敗1分けで、ヴィッセルに勝ち点50で並ばれてしまったガンバ大阪。 足りないピースは前線の決定力であることはあきらか。 そして、この試合から出場が可能になる、帰ってきたガンバの至宝、宇佐美貴史。 長谷川監督が演出したのは、宇佐美ワントップ、遠藤トップ下、しかも宇佐美とジュニア時代からともにプレイしてきた同い年の大森晃太郎のJ初スタメン、というたぶんサポの誰もが想像もしていなかった起用。 ......と、これだけでも十分におもしろいドラマになる期待が高まるところ。 幕が上がると、なんとあっさり5分にヴィッセル先制! 静まり返る万博。 雰囲気がどよーんと重くなったところに、なんと、なんと、なんと、1分後に宇佐美、同点ゴール。 しかも大森、フタ、ヤットがからんでのGOAL! 一転沸き返る万博。 そして30分後には、CKから岩下の落としをまたもや宇佐美が決めた! 後半には、前半散々な出来だった藤春が、ハーフタイムに宇佐美に何か言われた効果があったのか、見事なアーリークロスをあげ、たぶん私が観るのも2回目(2年前のVS浦和戦以来)のヤットのヘディングゴール! その後、鹿島時代からの天敵、田代に1点返されてハラハラヒヤヒヤとなったのも、今になれば「盛り上がり」でした。 宇佐美に関しては、オフザボールの動きがない、とか、運動量が足りない、とか、いろいろ批判も多いのですが、少なくともこの試合で観たかぎりはフィジカルは強くなり、何より前線でボールを取られない、パスのミスがない、というのが2年前からの成長でしょうか。 そんなことは置いておいて、「華のある役者」というのがいるものです。ピッチに立つだけで、輝きを放つ選手、というのが。宇佐美にはそれがある。 ヤットのFWという役所。まあ緊急時対策だったのでしょうが、どのポジションに置いても、人を活かし、自分を活かす術を知っている、と感心しました。それは、彼自身が演出家の才能を持ち、しかもそれを磨いているからなんでしょうね。サッカーのドラマの運び方を、彼ほど知っている人はなかなかいない。 昨晩の東アジア選手権、日本VS中国を見ながら思ったのは、なぜヤットが今も代表に呼ばれ続けているのかは、その能力の高さ故だと思いました。 付け加えると、高萩という選手にもその能力があることを確認。高萩、きっと次世代の日本代表になくてはならないピースになるんじゃないかな。