10年以上前のことになりますが、父が何かの賞をもらって祝賀会の席で挨拶しました。 「こういう賞をいただけたのは、まわりの方々のおかげです」という当然の感謝の気持ちをひとしきり述べた後、一息おいてカンニングペーパー(?)から顔を上げてきっぱりした口調で言いました。 「賞をいただけたのは、私の能力が秀でていたからではありません。運よく長生きできて、長い期間働き続けてこられたからです。戦争を生き延びられたことが本当に大きかった。あの戦争がなければ、私の同年輩のどれだけ多くの方々が立派な仕事をなされたか。この場に立ちながら、若くして亡くなった友人たちの顔が浮かび、まことに大きな損失であったと残念でなりません」 参院選で自民党が大勝し、憲法改正の動きが激しくなってくる今、あの祝賀会での父の表情と口調がしきりと思い出されます。 忘れてはいけないことがあります。 誰もが本人の意志と関係のないものに生命を奪われたりせず、十分に与えられた生を生きられること。それが人間にとって何よりも大切だ、ということ。 当たり前だと思っている、もしくは口に出すのが青臭くて面映いような、たとえば「平和の重要性」とか「大切なのは一人ひとりの生命」とか、そういうことを、やっぱり大きな声で、はっきり言わなくてはならない。そういう時代が来てしまいました。 忘れてはいけないことがあります。 戦争は破壊しかもたらさない。勝敗に関係なく、戦争は個人にとってはもちろん、国家にとってもまことに大きな損失なのです。 忘れてはいけないことを、つぎの世代に伝えることが、私たちの世代の責務ではないでしょうか。