しだいに佳境に入りつつあるこの旅行記録ですが、しだいに記録としての価値に疑問が芽生えてきてもいます。でも、まあ本人のメモだからね、と言い聞かせてタンジェ滞在の続きです。 モロッコでの買物で何がたいへんって、値段がついてないのでいちいち時間をかけて交渉しなくてはならないことです。しかも、たいてい信じられないほどの高値を言ってくるので、まずは10分の1の値段を言って歩み寄りです。 店に入る前に必ずオマルさんがつばを飛ばしながら言うこと。 「オマル、いい人。この店の人、友達。だからいい人ばっか。誰もプッシュしない。この店はあなたたちのホームだと思ってくつろいでください」......いやー、プッシュしまくりでしたよ、オマルさんも店の人も。どこがホームなんだ! ずーっとアウェイ気分を味わいましたぜ。 絨毯屋の屋上は「絶景です! あなたの家と思ってどうぞどうぞ」と案内されました。しかしその後、すぐに絨毯販売会が始まりましたが。 th_DSC05092.jpg 連れて行かれた土産物屋は、絨毯&アクセサリーを中心とするいわゆるお土産物屋さん(私はアンティークのピアスと父へのお土産として石を彫った人形を購入、夫がアンモナイトと三葉虫の化石を購入←この話はおもしろいので後述)、薬屋(モロッコ産のアルガンオイル、蚊よけ虫よけの香料入りクリーム、薬草からの料理用スパイスやハーブなどを、薬屋さんの口上つきでつい購入) モロッコスリッパ屋(ビーズ刺繍に魅かれて革スリッパ購入)、民族衣装屋(娘が「大学のゼミの同窓会に着ていく」とカフタンを購入)、生地屋などです。生地屋でスカーフを巻かれ、「似合う似合う、50ユーロ」と叫ばれた娘。もちろん買いませんでした。 th_DSC05138.jpg 夫はモロッコに行くと決めたときから、「化石を買う!」と決めていて、土産物屋に座るなり「化石を見せてくれ」と言ったもんだから、お兄さんが張り切ってどーんと石を持ってきました。 三葉虫の化石を見た瞬間、娘が「きゃー、ごきぶりみたい!」と逃げてしまい、ほかの面々も興味がないあまりに消えました。 その中で夫がつぎつぎと出てくる三葉虫とアンモナイトを前に、お兄さんと丁々発止。 気に入った化石2点を前に、相手が言ってきたのは150ユーロ! 夫がうーん、150ユーロかー、とかなんとか言っているので、これは危ない、と私が「ま、20ユーロだね」と牽制。 お兄さん、「話にならん」と私を無視し、夫に「サハラ砂漠に行くだけでも、150ユーロくらいかかる。ものすごく勉強している値段だ」とかなんとか言っている。あんたがサハラ砂漠に行ったわけじゃあるまい。 私に言わせると、なんで三葉虫とアンモナイトの石に2万円近く出すのか全然わからない。 でも、夫も毎回私がアクセサリーとか服とかに目の色を変えるのがわからないのだろう。だから今回は、夫が欲しいというのであれば、私も協力しようじゃないか、と思い、大幅に譲歩して「2点で35ユーロ」と言ってみる。(何が大幅譲歩なんだか) お兄さん、完璧に私を無視し、夫に化石のすばらしさを得々と説いている。夫は「うんうん、そうだね、わかってるよ」と言いつつ「それなら2点で50ユーロ出そうじゃないか」と、いかにも太っ腹そうに言っている。お兄さん、いいカモだと思っていたのに、妻の「35ユーロ」を聞いていきなり強気にねぎる夫を見て、「奥さん、下にアクセサリーがあるよ、見て来たら」と追い払おうとする。 私はなおも「35ユーロ」としつこく言い張ってみたのだが、やっぱりこれは夫が買いたいものを買わせてあげなくちゃ、と思って、アクセサリーショップ見学に切り替えました。 結局、2点で70ユーロで手を打ったそうです。 この旅行中、夫が一番生き生きとして楽しそうだったのが、この化石ショッピングでした。 さて、午後には新市街を女4人で歩いてみることにしました。 メディナでは買えなかった小物の土産物を買う、という目的もあり、フランス広場からパスツール通りをだらだら下ってショッピングです。 メディナでは見かけなかった、ジーンズやカジュアルファッションの女性たちも新市街を歩いていました。でも、圧倒的多数は何をするでもなくカフェでミントティーを前におしゃべりしている男性たちでしたが。成人男子失業率15%を実感です。道路脇で目立ったのが、靴磨きの人たち。腰掛けるのが、自転車のタイヤを組んだもので、どうやって座るのかが見たかったのですが、客は現れず。 th_DSC05184.jpg ふと見つけた本屋さんで、娘がアラビア語の初級者用読本や練習帳とか下敷きを購入。そしたらベルベル語の下敷きもあって、一気にテンションが上がる母娘2人。ベルベル語、面白そう! 私はその他に、タンジェ出身の作家、モハメド・チョウクリの「裸のパン」(フランス語)を購入。自伝的小説ですが、かなり壮絶な話でした。 購入したお土産と、最後に本屋のお兄さん(ちらっと顔を出している)と店長と記念撮影。 th_DSC05150.jpg th_RIMG7768.jpg 夕飯は、ホテルで紹介してもらったフレンチ・レストラン"Art et Groumet"へ。このレストラン、まず立地がいい。グランソッコの一角で、テラス席からは広場が一望できます。 料理もタンジェとは思えない繊細で美しい盛りつけ&味。ワインもおいしかった。メニューがキャンバスになっていて、裏に絵が描かれているなんていう気の利いた演出もありました。中でもおいしかったのが、おこぜのカルパッチョ。気に入った! th_DSC05166.jpg 客は大半が西洋人(というかフランス人)でしたが、1組、今回の旅で出会った最高のモロッコ美女たちがいて、一緒に記念撮影。 th_DSC05171.jpg デザートもとってもしゃれていて、私たちが「おいしい!」「きれい!」と褒めちぎったせいか、大盛りのアイスクリームまでつけてくれて、どれも完食。満足満腹。お値段はそれなりにしましたが、食を満喫した感じがしました。でも......モロッコでフレンチに感激ってどうなんだろう? th_DSC05172.jpg タンジェの夜はにぎやかにふけていき、翌日はまたジブラルタルを渡ってスペインに戻ります。 ところが、そうは簡単にはいかなかったのです。 私たちは無事、ヨーロッパの地を踏めたのでしょうか? バタバタと駆け回ったタンジェの旧港風景です。 th_DSC05046.jpg