ロシア旅行記のつづきを待っていてくださる方がいると知り、今年が終わらないうちに書き留めておきます。9月上旬の旅行で3ヵ月たっているのでこまかい記憶が薄れつつあるのですが、強烈に印象に残っていることだけでも書いておかないと……。
今回はモスクワ→ウラジーミル、スーズダリ→サンクトペテルブルクとヨーロッパ・ロシア側のおもだったところを巡りました。
(スーズダリの街を取り囲む城壁というか土手、クレムリン。カーメンカ川に沿って土手が築かれ、主要な建物がその中に入っています)
どこも印象的ではあったのですが、3ヵ月たってもそのときの風や光線や音といった感覚でとらえたものがまだ蘇ってくるのは、「黄金の環」と呼ばれるモスクワ北東に環状に広がる中世ロシアの街。11−12世紀、群雄割拠して覇権を争っていた公国の遺跡がある地帯です。 モスクワよりも古くに栄えた地の都市は、社会主義の時代を経てまだなお「ロシアらしさ」が色濃く残っています。ああ、ロシアの大地ってこういう景色を言うんだわ、と思わず深呼吸したくなるところ。ウラジーミル出身のガイドさん曰く「(豊かな大地の恵みを満喫してきた土地、という意味で)一番、ロシアらしいロシア」なんだそうです。
(ロシア民謡で歌われるカリンカ。9月上旬、秋の始まりはカリンカをはじめ熟れる木の実が告げてくれます)
(スーズダリの道ばたではそんな木の実をバーブシュカ=おばあさんたちが売っていました。味見させてくれたのですが、どれも甘酸っぱくてとてもおいしかった。ジャムや果実酒にするのだそうです)(道なき道を歩いていると、なぜかそこは人の家の庭だったりして……。木の実をとっているのだそうです)
(小さな街の教会の前には、露天の土産物屋が軒を並べています。この地域の名産品(?)、寄せ木細工の箱と、その上に鎮座するテレビの人気アニメの人形)
モスクワからロシアが誇る快適な超特急「サプサン(ハヤブサの意味)」で2時間。前に座った1歳のかわいい男の子と遊ぶうちに到着したウラジーミルは、黄金の環の玄関口といっていい街。初日は、出迎えの車に乗って30分ほど黒土の畑の中の道を走ったスーズダリという小さな街に宿泊しました。
クレムリン=城壁に囲まれた街には、12世紀スーズダリの公国が栄えていたころに建てられた教会や修道院の遺跡が密集(?)しています。娘と私は地図を片手に、半日かけてそのほとんどを見て回りました。あとで地図から「歩行距離」をはかると全行程15キロほど。全部回ってもおそらく18キロ、1日あれば徒歩で回れます。それくらい小さな街でした。
(ラジェストヴェンスキー聖堂内のフレスコ画。モスクワの聖堂のフレスコ画はぎらぎらしていましたが、このあたりではもう少し素朴感が漂います)
ただし、2人とも地図の読めない女なので、グーグルマップさんの指し示す通りに歩いていたら、草原の道なき道を行くはめになってしまい、途中でヤギに脅されたり、犬につきまとわれたり、「そりゃ最短距離かもしれないけれどさー」とぶつぶつ言いましたけれどね。翌日、ついてくれたガイドさんに「スーズダリは昨日半日で全部回っちゃった」と言ったら、「あなたたち、どんだけ健脚なの?!」と驚きあきれられました。でも、車で回っても20分で一周できる程度の規模です。
11世紀に建設されたスーズダリの象徴的な建造物は、ラジェストヴェンスキー聖堂です。蒼い塔に白い壁の典型的なロシア正教の聖堂は、クレムリンの真ん中にどーんと立っています。あまりに人影がなく、どこから入っていいのか、どう巡っていいのかもわからず右往左往していると、観光バスが聖堂前に停まり、どやどやと中国人観光客が出てきたので私たちもちゃっかり列の後ろについて中に入りました。ところが、団体さんは聖堂内に入ったと思ったら数分後に出ていってしまい、私たちはお目当ての「宮殿の応接室」をまた右往左往して探すはめに。やっと探し当てたら拍子抜けするほどの普通の宴会場でした。
スーズダリで一番印象的だったのが、丘の上まで必死に登ってたどりついたスパソ・エフフィミエフ修道院外から眺めたポグロフスキー修道院でした。画像は下から見上げた修道院。
どうもそこはスーズダリ住民にとっても「絶景の憩いスポット」になっているらしく、夕陽を眺めながらおしゃべりをしているおじさん、おばさん、若者たちがちらほら。私たちもカーメンカ川と修道院を見下ろしながら、しばし休憩。その後、住民の方たちの後をついて土手を下り、道なき道を歩いてディナーをとる場所を探したのでした。ディナーの中身については、「お食事編」でまたふれます。
ディナー後、ライトアップされた聖堂や修道院がカーメンカ川に姿を映し、空にはくっきりと月のぼる中、また人影がほとんどない街を通ってホテルに帰りました。ロシアの大地の壮大さを、昼間よりもっと強く感じましたね。
翌日は、ウラジーミルッ子のガイドさんがウラジーミル周辺の旧所名跡を案内してもらいました。
一番印象に残ったのが、トップにも画像を掲げたポクロヴァ・ナ・ネルリ教会。駐車場で車をおりて、鉄道の線路を越えて林を抜けると、草原が広がります。石畳の細い道の向こうに白い点のように見えるのが教会。280度くらいに広がる地平線を見ながら、ひたすら歩くこと30分。前の小さな池にくっきりとその姿を映して「白鳥」教会がたたずんでいました。教会そのものはごく小さいのですが、周囲の景色が美しい。ガイドさん曰く「一年中、とくに一面雪原となる冬にはロシア人の観光客が大勢訪れる」人気の観光スポットだそうです。結婚写真の撮影でも人気だそうで、私たちが訪れたときにもウェディングドレス姿の女性がプロのカメラマンの指示に従ってポーズをとっていました。
もう一箇所、撮影にもぴったりの人気スポットが、ウラジーミル市内中心に位置するプーシキン公園の展望台。遠く地平線まで広がる森林は、キエフ公国の軍隊の侵入を阻んだのだとか。「冬は雪が、夏場は森がこの豊かな大地を守ったのです」とガイドさん。
ウラジーミルの街を少し離れると、目に入るのは地平線まで続く畑か、うっそうとした森。「ロシアの大地」を実感した黄金の環ツアーでした。
コメント
コメント一覧 (2)
今回の旅行記では、建物のすぐ周りに草原が広がっているところや、壮大な森林の中にぽつりとあるポクロヴァ・ナ・ネルリ教会が印象的で、ロシアの国土の広さをうかがえました。
ロシアへ行く機会や周りに訪れたことのある知り合いがいないので、貴重な体験を知ることができました。
話変わって、今年もどうぞよろしくお願いいたします。今年こそ、どこかのスタジアムでお目にかかりましょう!