定額給付金が支給ってことで、どう使おうかなとお考えの皆様。
本を買うっていうのはどうでしょうか?
12,000円あったら、かなりたくさん買えますぜ。
というので、私が10代のころに寝るのを惜しんで読み、今も忘れられない本をご紹介するシリーズをつくってみました。
100冊くらい紹介したいところだけれど(実は100冊リストアップしたんだけれど)12,000円で100冊はきついと思うので、軽く50冊くらいを目標に。
ちなみに以下の本は全部アマゾンで買えます。
「モンテ・クリスト伯」アレクサンドル・デュマ 新庄嘉章訳(と思う)
もういろいろなところで書いているので割愛するが、私が初めて「大人の本」に出会ったのは中学1年生にあがる春休みのこと。
玄関脇の廊下にあった鍵付きの本棚の鍵を「もう大人の本を読んでもいい」と言って母が渡してくれた。わくわくしながら開けたところに、世界文学全集(筑摩書房だったと記憶しているのだが、確認ならず)のほか、吉川英治、松本清張などがぎっしりつまっていた。
最初に私が手に取ったのがこの本。春休み、私の心はエドモンド・ダンテスとともに泣き、恨み、復讐を果たしてもむなしい、という「大人の旅」に出ておりました。
翻訳は新庄嘉章氏だった、と記憶している。憧れていた翻訳家の一人。
この本で性の秘密を知った、というのを今打ち明けておこう。(未婚の母がカトリック国で激しく糾弾されるシーンで、えええー、結婚せんでも、ベッドでいちゃついただけでも、子どもができるんや、と仰天して、さっそく調べたのは言うまでもない)
「コンティキ号漂流記」トール・ヘイエルダール 水口志計夫訳
読んだのは小学生のとき。図書館で借りて読んで、あまりにもおもしろくて夢中になったので、ねだってねだって買ってもらい、ぼろぼろになるまで読んだ。
いまだにこの探検小説以上の作品に出会っていない。
古代の人の移動を証明するために、古代人と同じつくりのイカダに乗って太平洋を横断する人類学者の話。実話だとわかっていても、ヘイエルダールさんがあまりにハンサムなのと、文章があまりにうまいのと、話ができすぎなのとで、どうしても物語のような気がしてならなかった。
「可愛いエミリー」モンゴメリ 村岡花子訳
私 のティーン時代は、モンゴメリに明け、モンゴメリに暮れた、といってもいいほど、モンゴメリ一色だった。「赤毛のアン」シリーズ(一番好きだったのが「ア ンの夢の家」。ギルバートとの浜辺の新居にあこがれた)はもちろんのこと、この「エミリー」のシリーズ、「丘の家のジェーン」「パットお嬢さん」「果樹園 のセレナーデ」まで、舐めるように読んでいた。
なかでもこの「可愛いエミリー」は、「どうしても書かずにはいられない」というエミリーにとても共感し、影響され、毎日私も何か書いていた。モノカキになれたのは、エミリーのおかげかも。
「新書太閤記」吉川英治
実はこれも読了したのは小学5年生くらい。親にナイショで読んでしまった。「今日は1冊だけにしておこう」と決意しているのに、どうしてもやめられなくて、20巻近くあったのを10日間で読み切ってしまい、目がはれるわ、気持ちが悪くなるわ、で親に怒られた。
そ れくらいおもしろかった。当時の赤い表紙に黒い墨字でタイトルがかかれた装丁が忘れられない。あれはとてもいい装丁だった、といまだに思う。新聞小説から 単行本化されたためか、ところどころに挿絵が入っていて、寧々の田舎くさい顔とか、竹中半兵衛の貧乏くさい感じとかに影響された。
「細雪」谷崎潤一郎
谷 崎は思春期の女の子をあやしい気持ちにさせるので、どうしても電車のなかで読めなかったのだが(「痴人の愛」とかカバーをかけても恥ずかしかったし)、 「細雪」は地元が舞台ということもあり、友だちと電車のなかで「四姉妹の誰に一番共感するか?」なんて話題で盛り上がって、楽しかった。ちなみに私は一番 下の妙子にあこがれていた。雪子だけは許せん、こんな女とはぜったいに友だちになれない、と思った。雪子のせいで、私はいまだに病弱なふりをするオンナが 嫌いだ。
「風と共に去りぬ」マーガレット・ミッチェル 大久保康雄 竹内道之助訳
ウ エスト47センチなんてありえないし、スカーレットな女には死んでもなれないだろうけれど(気が弱いから)、せめて男に「服買って」「楽しいところ連れ てって」と言えるくらいにはなりたい。それがかなわないなら、神様、どうかバトラーのような男と、結婚とは言わないが、つきあうくらいはさせてください、 と不謹慎に祈った16の秋。
「デミアン」ヘルマン・ヘッセ
私の額にもしるしが出てほしい、どうかお願いと念じながら寝て、朝起きて必死に眺めたけれど、ついに出なかった。
デミアンに熱中したあと、「ポーの一族」を読んで、なぜかデミアンが重なったのだが、なぜだろう?
「陽のあたる坂道」石坂洋次郎
忘れもしない。TV化されたとき、石坂浩二が二男役をやったのだ。田園調布の多摩川土手の景色を描くシーンがあって、私もマネして芦屋川の土手の風景を油絵で描いたのだ。15歳のほろほろした思い出。
「ギリシャ神話─付北欧神話」山室静
暗 記するくらい何回も読んだ。おかげで、いま翻訳するとき、何かと役立っている。ギリシャ神話の神様たちと、とても親しくつきあっているような気になる。一 番好きだったのが、ダフネとナルシスの物語。やっぱりね、自分がかわいいとかかっこいいとか思いこんじゃうと、悲劇が起こるんだ、と自戒した(ウソ)
「八月の光」ウィリアム・フォークナー 加島祥造訳
フォー クナーといえば、「サンクチュアリ」だよ、とか、傑作は「響きと怒り」だ、といろいろ言われるが、私にとって今も忘れられないのが「八月の光」だ。アメリ カ南部のキリスト教的束縛と抑圧、それに対抗する人の強さややさしさがしみこむような話だった。今読んだらちがう印象を持つかもしれないけれど。少なくと も、この本には「サンクチュアリ」にはない明るさとか希望があったように思う。
「赤と黒」スタンダール 桑原武夫訳
大 学生のとき、友達とだらだら「人生」について(笑)話していて、フランス文学専攻の先輩(ものすごくかわいかった)が「ジュリアン・ソレルのような生き 方って、理解できるんだけれどついていけない」みたいなことを言ったら、その先輩に憧れていた男の子が「そうかー、俺はやっぱりアグネス・チャンがいいな あ」と言ったので、みんな一瞬シーンとなって、あとは爆笑、失笑!
つづきはまた。