2011年04月
新刊「サムライブルーの料理人」
「サムライブルーの料理人―サッカー日本代表専属シェフの戦い」
西芳照著
白水社 1680円
福島県楢葉町にあるスポーツ施設、Jヴィレッジは日本代表だけでなく世界各国のサッカー代表チームがよく合宿を行ってきたことで有名です。そこにあるレストランで長年総料理長をつとめ、2004年よりサッカー日本代表の海外遠征に帯同してシェフとして腕をふるってこられた西芳照さんが、日本代表とともに世界各地で戦ってきた7年間を振り返った本です。私は構成、取材、まとめなどで本の制作のお手伝いをしました。
ワールドカップドイツ大会、南アフリカ大会の地区予選と本大会、中国、東南アジア、カタールで行われたアジアカップ、東アジア選手権など、7年にわたり50回以上の遠征試合に帯同してこられた西さんは、ジーコ、オシム、岡田、ザッケローニ(敬称略)という代表監督とスタッフ、そして何より選手たちから篤い信頼を寄せられている料理人です。料理人としての腕が一流であることは言うまでもありませんが、それ以上につねに笑顔を絶やさない人柄によって誰もに慕われ(海外宿泊先の厨房のシェフたちにまで尊敬され愛される)、突発事態にもあわてずさわがず臨機応変に対応する仕事ぶりがすばらしい。食材や厨房設備などで不便を感じることも多い海外で、選手たちがコンディションを整えてピッチに立てるのは、「西さんのつくったものならまちがいない」と信じて食欲が落ちないおかげ。そんな様子が本書をお読みいただけるとよくわかると思います。ふだん代表の試合からだけでは見えないかもしれないけれど、日本のサッカーを支えている一端は、西さんをはじめとする裏方のスタッフたちなのだ、ということも感じていただける内容です。
サッカーが好きな方。Jリーグや日本代表を応援していらっしゃる方。サッカーをプレイするお子さんをお持ちの方。サッカーには興味がないけれど、元気になれる料理レシピを知りたい方。すべての方にぜひ読んでいただきたい本です。
最後に。校了する寸前の3月11日。西さんが働く福島県楢葉町は東日本大震災で大きな被害をこうむりました。幸い、西さんも南相馬市にいらっしゃったご家族も無事だったのですが、原発事故もあって西さんの故郷では予断を許さない日々が続いています。そんな時期にこの本を出していいものか、と迷われたのではないかと思いますが、こういう時期だからこそ、福島が多くの方々にとってどんな故郷であるかを知っていただく意味で出すべきだ、と私は思っています。
本文の第一行目は「山の幸海の幸に恵まれた福島で育つ」です。西さんがこよなく愛される福島が、自然が豊かな故郷に戻れるよう、私も本当に微力ではありますが、お手伝いできることをしていきたい、と心しています。
まだまだこれからですよ
あーえーいーおーうー。きのうの試合はどーんと重く胸にこたえたけれど、かるーくスルーして今日は別の話題にしていいですか?(いいよ、いいよ、とガンバサポならきっと言ってくれるはず。後半の川西選手のゴールだけ見て脳裏にそれだけを刻みました)まだJリーグは2試合目。まだまだこれからですよ。それにしてもなぁ。ホラーな守備をなんとかしてください。
さて、今日はまったく別のトピックスです。
この2カ月ほど、つまり大震災前後からジツカワがエネルギーと時間を注入していたのは......書道でした。すみませんすみません、世の中がこんなにたいへんな時期になーにやってんだか、というお叱りは覚悟の上です。某書道展の応募作品締切が昨日だったもんで。制作期間2カ月。予定されていた合宿や練成会が震災の影響で(当然ながら)中止になり、自主練を中心に書いて乗り切った今回でした。
書道展の応募は今回で4回目。漢字と近代詩文書の2部門で応募したのですが、どちらも自分で探してきた素材で書くことにしました。しかも漢字は先生にお手本をもらわないで草稿を手直ししていただきながら書きます、というずうずうしさ。
そしたらですね、これが楽しかったのです。とはいっても、どんな素材にしたら作品になるかがわからず、まわりの先輩たちに教えてもらってだいたい見当をつけて詩文を選んでも、今度はどう書いたらいいのやら見当がつか。草稿みたいなもの(小さな紙に書いていくんだけれど、これがまたヘタなんだわ。草稿のために練習したりして)をつくって先生に見てもらうことも繰り返しでした。実際に書き出すまでにえらく時間がかかり、ああ、早く筆をとりたい、原寸大の紙に書きたい、と焦燥感にかられたときもありました。締切まで1カ月を切るころにまだ悶々としていて「お手本をもらっておけばもっとらくらくだったのになあ」と内心、自分の怖いもの知らずに舌打ちしたくなったりもして。
いくつか題材を選んで、先生に草稿を書いてもらって原寸大の紙に書くと......これがまたうまくいかない。題材が悪いんだか、それとも書き方が悪いんだか。いやなんてたって腕がついていかないから、自分で見ても笑っちゃうくらいつまんないものしかできあがらない。もどかしい。いらいらする。何がいけないのかって、自分のなかに「こういう作品にする」というイメージが浮かばないままに書いているのがいけない。一番ストレスがたまる。
そんなときに教室で先生から勧められて「金子鷗亭――墨ニュークラシック 次世代に伝える21世紀新古典」なる本を手に取りました。アマゾンにある本の紹介をそのまま引き写します。「中国・日本の古典文学を原文のまま書くのが「書」であった時代に、時代と共にあるべき書の姿を模索し、書の概念までを動かした一人の人物の存在があった。「近代詩文書」の生みの親にして、創玄書道会の創始者、金子鷗亭。その存在自体が、いまや現代の私たちを導く「21世紀の新古典」と呼ぶにふさわしい」
この本を読んで、というか、観賞して、あー、書とはそういうことか、と自分なりに腑に落ちるところがありました。腑に落ちるどころか、私はちょっと感動したね。 中野北溟さんという書家の方が解説をしているのだけれど、その文章がまたいい。書かれた線から読み取る呼吸、姿勢、身体の開き方、紙の上だけにとどまらない空間の作り方、時間を超えていく書を書くための古典との向き合い方といった話がとてもわかりやすくておもしろい。しかも(実際に筆を持っている自分としてはおこがましくも)作品に添えられた解説の一つ一つの話に納得がいく。人を感動させる書とはどういうものなのか。あくまでも言葉のうえだけでの理解ですが、少しだけイメージができた気がしました。(臆面もなく言っちゃうと、私はそういう書をめざしたいよ)
この本と、何冊かの古典の法帖を毎晩眠る前に眺めてイメージをふくらませ、今の自分の技量の範囲で、自分が書きたいものに近づける方法をいろいろ考えました。ってエラソーに言いながら、最終的にはぜーんぜん具体化しなかったんだけれどね。技術も経験もあまりにも不足していることを痛感しましたわん。
まあそんなこんなの試行錯誤がすごく楽しかった。学ぶことがあまりにも多いとわかって、かえってやる気も出た。始めてからまだ2年ちょっとだけれど、あらためて趣味として書を選んでほんとよかった、と思いましたです。
まだまだこれから、やることは山のようにあるな。ガンバも、私も(いきなりそこか?)
あわてず、あせらず、あきらめず
今年はしょっぱなからギックリ腰をやって整形外科と整体に通い、3月には花粉症がひどい上に節電で暖房を切ったら風邪をひいてますます悪化して内科と耳鼻科に通い、おまけに歯の状態がまた悪化して歯医者に通い、医療費ばかりがかさんでしまったうつうつと送った4カ月でした。
この体調の悪さに加えて震災で前向きな気持ちが少し切れてしまったこともあり(もしかすると、震災が原因の不安やストレスが体調の悪さを呼び込んだような気もしないではない)、仕事も家事もペースがいささか落ち気味だったのですが、連休を前にやっと「やる気」が戻り、つぎにやってみたいことの計画を具体的に練っています。
でも、計画もじっくり立てよう、というつもりでいます。以前は思い立ったらすぐに行動に移し「スピードが命」なんて広言していたのですが、それはさすがに押さえています。というか、仕事や家のことにかける「意欲」みたいなものがここ数年でやや変わってきていたのが、震災をきっかけにはっきり転換した感があります。
少し前までは、一分の時間も惜しんで仕事も家事も趣味も全方位で全力投球し、定量的にはかれるもので結果を出すこと(はっきり言えば形にすること、そしてお金を稼ぐこと)を目標にしていたのですが、それはなんかちがうかなあ、そればっかりじゃむなしくてがんばれないなあ、と思えてきました。
そんなにあわてて結果を求めなくてもいいんじゃないか。求める「結果」は今すぐ目に見えるものでなくてもいいんじゃないか。今は目に見える結果が出なくても、あせらず、あきらめず続けていくことで、何かしら得るものがあるのじゃないか。そんな風に考えるようになってきました。
しかも「今すぐ結果が出なくても」という点についても「私が生きている間じゃなくてもいいか」とまで思えてくるのがおそろしいところ。これが「老いる」ってことでしょうか(苦笑)
ギックリ腰になったとき、月並みな言い方で言えば「ああ、もう無理はできないのだな」と悲しかったのですが、それから2カ月たった今となっては「方向転換しなさいっていう身体からのメッセージだったんだ」と思えるようになりました。「あれもやらなくちゃ、これもやりたい」と駆けずり回るのではなく、「何もかも自分が無理してやらなくてもいいし、やったことの結果がすぐに出なくても気にしない」と自分に言い聞かせています。
22年前、会社をやめてフリーになるときに高瀬毅さんというジャーナリストから「あわてず、あせらず、あきらめず。それがフリーで働くときに心することですよ」という励ましのメッセージを送られて、以来、私は勝手に座右の銘にしているのですが、今こそそれを本気で実践する時期なのだな、と思います。
ACL GL 第4節 VS済州
ガンバ大阪 3-1 済州ユナイテッド
得点:アドリアーノ 2 武井1/済州 いつもの10番
引き分けでもGL敗退が決まってしまうこの一戦。きっと選手以下目の色が変わって強引プレス作戦で行くのではないか、と予想していたのですが、残念ながら前半はまたもや空回り気味。ミスパスが多くてボールを奪われ、プレスに行くとかわされる。じりじりとした展開でしたが、やっとお目覚めのアドリアーノが先制してくれました。あああ、長かったよ、アドリアーノ。待っていたよ、アドリアーノ。
第3節@済州では、後半にいきなりお疲れモードになってしまったガンバさんは、その反省を生かしてこの試合ではなんとかペースをつかもうとしますが、やはり嵩にかかって攻めてくる済州にたじたじ。このあたりは「試合勘不足」ってことで解釈してよろしいんでしょうか?
でもそのなかでまたもやアドリアーノ! 裏狙いのカウンターが見事にはまりました。万歳万歳(まだ二唱)。
その後、ぐいぐい、えいやえいやの済州にずるずるラインを下げ、左SBが狙われまくってはらはらどきどきを演出してくれるガンバさん。で、案の定失点。わかりやすすぎるほどの失点シーンでした。
しかし昨日のガンバさんはそこから踏ん張った。帰ってきた山口CBが必死にみんなを鼓舞してラインを上げ、カウンター狙いを徹底させる作戦。昨晩はねぇ、言っちゃ悪いけれど最後列を守るCBへの信頼感については、智のほうが上なんだなってことを痛感しました。少なくとも私は。
そしてその作戦が実ったのが残り時間数分ってところの武井選手の豪快なミドルシュート。
佐々木選手が抜けだしたところから私はテレビの前ににじりよっていたのだけれど、イグノ選手がキープしてちょんとボールを出し、それを駆け上がってきた武井選手がスパーッと蹴りこんだシーンでは、テレビ画面をたたく距離まで接近しておりましたよ。やったやったやったー、と飛び上がってから急いで同志にメール。同志、もう泣いていました(早!)
こういう試合を見せてくれるからガンバはやめられません(とか言いながら、その前日のFCソウルVS名古屋戦でも私は大興奮だったわけですが)
昨晩は天津がメルボルンに負けたために、ますます混とんとしてきたこのグループ。まだまだわかりません。
まずは5月4日、@メルボルンで勝ちましょう!!