新刊の案内です。発刊と同時に北欧に出かけてしまって、すっかりご案内が遅くなりました。
「孤高の守護神 ゴールキーパー進化論」
ジョナサン・ウィルソン著 実川元子訳
白水社刊
サッカーのゴールキーパー、という特殊なポジションを通して、各国、各地域のスポーツ文化と歴史を描いた本です。著者は、「サッカー戦術の歴史」などの著書がある、博覧強記のサッカージャーナリスト。ピッチ上のGKの話以上に、なぜそのGKがその国、地域を代表するような存在になったのか、そこまで踏み込んでいます。GKは変わりものが多いとよく言われますが、ほんと、奇人変人大集合。偉大なスポーツマン=偉大な人物ってわけじゃない。そしてまた、GKは身を持ち崩すタイプが多いのもなぜかがわかる。愛されはするが、嫌われ者でもあるんですね。つまり、個性が強い。
現在ブラジルで開催中のワールドカップを見ると、PKを阻止するかどうかだけでなく、ゴールキーパーの質や覇気がチームにいかに大きな役割をはたしているかを痛感させられます。ラウンド16で破れはしたものの、メキシコのオチョアはセーブだけでなく、つなぎや足元の技術や試合の読みすべてが素晴らしい!
アジア勢がグループリーグを突破できなかった理由の一つは、GKをいかに有効活用するか(セーブ技術だけでなく、守備の要としてDFとの連携や攻撃の組み立てへの参加など)の発想が欠けていたからではないか、と、本書をあらためて読み返しながら思いました。
残念なのは、1人をのぞいて、アジアのGKについての言及がまったくないこと。著者の調査が行き届かなかっただけではないと思います。GKがチームで担う役割が、サッカーの戦術そのものの進化の方向を示しているのではないか。イタリアのブッフォンやスペインのカシージャスを見ていると、GKのあり方がちょっと古かったのかなあと思わざるをえません。ましてや日本をはじめとするアジア勢も、GKのあり方を今一度見直す時期にさしかかっているのかも。まあ、私のようなシロウトがどうこう言うことじゃないですがね。