暮れはおせちだの掃除だのに(いいかげんにしてやめときゃいいのに)明け暮れて、年末のご挨拶をしないままに年が明けてしまいました。
あらためまして、あけましておめでとうございます
2018年が皆様にとって、そしてこの世界に暮らすすべての人たちにとって、少しでも心穏やかに過ごせる一年であることを祈念してやみません。

2017年がどんな年だったかと振り返ると、つぎの一歩を踏み出す前に、スタート台を製作する年だったかな、という気がします。実家を始末したこともその一つでしょうし、2人目の孫の誕生も私に次世代育成について考えるきっかけを与えてくれた出来事でした。
2017年は仕事が暇だったので、かなり本が読めました。と言っても、一時期のように1日に2冊ペースなんてことはもう目が痛くてできません。そういうところで年齢を感じます。映画もかなり見たけれど、1日3本はしごというのは無理になってきました(2本まではいける)
そんな中で印象に残った本と映画をあげておきます。まず今日は本から。

「子どもたちの階級闘争〜ブロークン・ブリテンの無料託児所から」
ブレイディみかこ著 みすず書房

思えばこの本に出会ったことで、私は「子ども(次世代)を育てることこそが、大人(現世代)に課せられた最大の使命ではないか」という思いを強くしたのでした。以前に、子どもを私立の小学校に通わせているママたちから「子どもの貧困って騒がれているけれど、私たちのまわりにはそんな子どもは一人も見たことがない。いったいどういうことなの?」と言われたことがあります。親が属する階級の分断が、子どもの分断につながっていることを思い知らされる一言でした。私立小学校のママたちを無知とかナイーブとかで片付けられない。学校給食だけがまともに食べられる食事で、夏休みになるとやせ細ってしまう子どもを実際に私も知っています。子どもたちが育つ中での階級差をどう縮めていくか。それは私の世代の責任だと思います。
ブレイディみかこさんの本は、出版されているものはすべて読みました。どの本も考えさせられるところが多かったけれど、私の印象に一番強く残ったのは、この本でした。
「チャブ」(オーウェン・ジョーンズ著 依田卓巳訳 海と月社)も何回か読みかえしたほど印象に残った本でした。もう長々と紹介したのでそのブログを読んでいただければ、と。

「小さな美徳」
ナタリーア・ギンツブルグ著 望月紀子訳 未知谷

私が敬愛してやまないイタリアの作家、ナターリア・ギンツブルグのエッセイ集。この本も期待を裏切らず。ナターリアは1916年ユダヤ系イタリア人家庭の末っ子として生まれ、ファシスト政権下で弾圧を受けます。反体制運動にかかわった兄と最初の夫を激しい拷問の末に獄死で失い、自身も3人の子どもを実家に預けて逃亡せざるをえなかったという人です。本書で私がはっと目を見開かされた言葉があるので、少し長いけれど引用します。
子どもの教育については、私は、彼らに小さな美徳ではなく、大きな美徳を教えるべきだと思う。貯蓄ではなく気前の良さとお金に対する無関心、慎重さではなく勇気と危険を顧みないこと、要領のよさではなく率直さと真実への愛、駆け引きではなく隣人への愛と献身、成功願望ではなく存在し、知るという願望を。
 ところが通常、私たちは逆のことをし、小さな美徳を尊重することに躍起になり、その上にすべての教育体系の基礎を置く。そうやって、安易な方法を選ぶのだ。なぜならば小さな美徳にはいかなる身体的な危険もなく、むしろ運命の女神の打撃から守ってくれるから」
このあとに大きな美徳については、いつか子どもたちの魂に自然に湧き出てくるだろうと思い込む一方で、小さな美徳は教えなくてはならないと考える、と続きます。
お金に対して無関心で、危険を顧みずに大事だと思うことには飛び込み、歯に衣を着せずに本当のことを率直に発言し、損得なしに困っている人を助け、社会的地位をあげることやお金を稼ぐこと以上に知的好奇心を大事にする、そういう人を今の世の中はなんと呼ぶかというと「バカ」もしくは「ナイーブ」です。
小さな美徳を口やかましく教えながら、大きな美徳を実践する人を「えらいわねー」とちょっとバカにした口調で評価すること。それを繰り返しているうちに、子どもは大きな美徳にまったく気づかず、それ以上にバカにする人に育ってしまう、という指摘は耳が痛かったです。

「大人に贈る子どもの文学」
猪熊葉子著 岩波書店

この10年ほど児童文学と呼ばれるジャンルの作品を読み続けています。猪熊葉子さんは児童文学研究者であると同時に、すぐれた児童文学を日本に紹介しつづけてきた翻訳者で、猪熊さんの名前が訳者名に記されている本を集中的に読んできた時期があります。とくにローズマリ・サトクリフの「第九軍団のわし」と「ともしびをかかげて」は何回読んでも感動します。
その猪熊さんが大人に向けて語った児童文学の魅力です。たかが子ども向けの本紹介と侮るなかれ。ご本人の読書歴、研究歴もさることながら、紹介されている本の読み方が深いこと。書かれた時代とその時代の子ども観、社会観についての洞察力に感嘆しました。
子どもとどう向き合うのか。子どもの精神世界をどう理解して、豊かにしていくのか。大人にとって、これほどおもしろくてやりがいのある「仕事」はない、とあらためて思います。

映画についてはまた明日。