一昨年からの断捨離活動の一環として、食品の無駄をなくすための見直しをやっています。そんなに大げさのことではなく、冷蔵庫冷凍庫内と食料棚のチェックを1週間に1回やるってだけのことですが、やってみるといかに自分が「もったいない無駄」の上で生活していたかよくわかって恥じ入るばかり。もっと恥じ入らなくてはならないのは、食料棚(っていうほどたいそうなものではないのですが)の無駄を無駄と認識しながら「ま、しょうがないか」と扉を閉めるときに一緒に意識にふたをしてしまって、もっと無駄を重ねていることです。冷凍食品は永遠に日持ちするってわけじゃないのに、余った食品や食材をとりあえず冷凍庫に入れてしまう。そして1年後にため息をつく、と。
 でもどうやって「無駄」を削ったらいいのか。「食べたいものを食べるお楽しみ」と「無駄を排すこと」のバランスはどうとればいいのか。まだ私にはわかりません。
 NHKで昨年世界のドキュメンタリー「すべて食べよう」 という番組が放映されました。アメリカのドキュメンタリー映像作家の夫婦が、スーパーマーケットで毎日捨てられていく膨大な食料品に心をいため、どうやったら無駄な食材が減らせるのか考えてみよう、というところから、我が身を使った実験に挑みます。それは「1年間、捨てられる食材をもらって(拾って)きて、それだけで食生活を賄う」という「実験」です。その1年を追いかけるうちに、夫婦は食糧をめぐる根深く、幅広い問題に気づいて愕然とし、各方面へのインタビューを重ねます。食品を扱う小売店舗から加工販売両者、流通業者、農家、酪農家までインタビューされた人たちは、口をそろえて「食品廃棄は大きな問題で損失」としながらも、「どうしたらいいかわからない」と肩をすくめます。そう、小さな食糧棚や冷蔵庫の「あまった食材」を前に肩をすくめ、ため息をついて扉をしめる私のように。
 「捨てられる食材をもらってくる」ことを始めた夫婦がまず直面したのが、スーパーマーケット側がかたくなに渡すのを拒否することでした。巨大なごみ箱に山積みされたチーズや食パン、ビスケットを前に、「まだ食べられるじゃないか、なぜ廃棄処分なんだ!」と詰め寄ると、そこに泣く子も黙る切り札が出されます。「ほら、賞味期限が切れてるだろ」。やれやれ、ここでも賞味期限か! 「でもたった1、2日過ぎているだけで、まだ十分に食べられるよ」と迫っても「だめだだめだ、帰れ」と追い払われる。
 そこで夜間とか警備の人がいないときに、こっそり巨大なコンテナみたいなゴミ箱にしのびこんで食品をあさり、車に積み込んで家に持ち帰ることになります。いつもバラエティ豊かな食材が捨てられているわけではないので、たとえばヨーグルトしか捨てられていなかったら、朝昼晩毎日ヨーグルトを食べ続ける、とか、ソーセージ大量処分に行き当たったら、冷蔵庫いっぱいのソーセージをひたすら消化するとか、なかなかたいへん。夫婦ともに半年で見た目もわかるくらい太ってしまい、「実験」の企画書を書いた妻は「もう嫌だ!この企画はやめる! 毎日同じものを必死で食べるのなんて、からだによくない!」と言い出します。夫に説得されて結局続けたのですが、どんどん顔色が悪くなり、肌ががさがさになっていくのが画面からもわかりました。賞味期限切れの食材を使った料理だから、とかではなく、たぶん「食べなくちゃ」という義務感から食べているだけで、何の楽しさもない食事からはやはり栄養が取れないってことかもしれません。
 番組ではレストランの食べ残しだけを餌にしている養豚場とか、 ちょっと折れ曲がっているからといって大量に捨てられるバナナとか、捨てられる食品の衝撃的映像も流れるのですが、それ以上に私がどきっとしたのは「どんな食材であっても、収穫し、加工し、保存し、消費地まで運搬し、販売するために地球上のエネルギーを膨大に使っている。食品を捨てるということは、そのエネルギーも無駄にしているということだ」という指摘でした。
 さて、ここからいきなり話が小さくなります。最近数ヶ月、私は「食品食べ尽くし運動」を実施中です。生協の宅配を私は20年以上活用しているのですが、それ以外の食品をできるかぎり買わない、生協も含めて購入した食品はできるかぎり食べ尽くす、という運動です。生協では「もったいない野菜」といって、毎週324円(税込)で買い手がつかずに余った野菜を買うことができるので、それも利用しています。どんな野菜が入っているのかがわからないために、ときにちょっと困ることもあるけれど、 廃棄処分になる野菜を救える気がして、少しでもエネルギー節約に貢献できるのではないかと自分をなぐさめてみたり。
 先週の宅配では、見事なにんじんが5本とさつまいもが6本入っていました。その週に、私は「春にんじん2本」を購入してしまっていたので、冷蔵庫の野菜箱に 7本並んでしまうことに! おかげで今週は「にんじん食べ尽くし週間」となりました。にんじんのポタージュ、肉じゃがならぬ肉にんじん、キャロットラペ、にんじんとうどのきんぴら、にんじんグラタン……食べ尽くしましたよ、1週間でにんじん7本。「すべて食べよう」の夫婦の気持ちがほんの少しわかった気がしました。同じ食材を食べ続けるのって、ほんとたいへん。
 さて、今日は生協宅配前日。冷蔵庫を空っぽに「しなくてはなりません」。ってね、「食べなくてはならない」というのは、食欲とは別物ですね。 頭の中の「食欲」と胃袋の「食欲」が別物ってことか。
 とりあえず、あまった野菜を全部刻んで入れた「春のちらし寿司」を紹介しておきます。
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