パリの炎暑がようやく落ち着いたところでリヨンに移動したら、なんとこちらは「記録的猛暑」が継続中。今日も予報は最高気温35度を超えるそう。観光に行こうかなと思っていたけれど、昼からイベントに誘われていることと、ホテルがなにせ中心部からとても遠いこともあって、ホテルライフを楽しむことにしました。リヨンは3年前のEUROで一週間滞在し、ほぼ全域を観光しつくしたはずなので。本当に美しい街です。グルメの街として有名ですが、風光明媚という点でもたぶんフランス屈指。コンパクトにまとまっているし、適度に都会で、適度に地方都市で、静か。好きだなあ。暑いのはかなわんけど。
滞在しているホテルはレストランが有名で、とくに「焼き物」に関してはなんかの賞をとったシェフが担当しているとのこと。だもんで、今日はランチに羊の炭火焼きを堪能してから、イベントに参加してその後にスタジアム入りをすることにしました。
なので、昼までガンバの天皇杯讃岐戦を同志が実況中継してくれるのを眺めながら、この旅行で読んだ本の記録をつけておこうと思います。
 
「三つ編み」レティシア・コロンバニ著  齋藤可津子訳 
2017年フランス出版界を席巻した映画監督の小説デビュー作品、だそうです。インドの不可触民、シチリアの「伝統的」な父系家族に育ち、毛髪加工会社を立て直すことになった女性、カナダのばりばり活躍中の弁護士。地理的にも社会階層的にもなんの接点もない3人の女性たちが、髪を通してつながる、という物語です。3人の話は並行して進み、最後まで接点がない。そして最後の最後につながり、三つ編みとしてからみあうのです。ル・アーブルに行ったとき、列車のなかで読み始め、続きを読みたくて試合から帰ってからベッドで読み始め、「早く寝なくちゃ、明日はパリに移動だ」という「理性」の声が聞こえなくなるほど夢中にさせてくれました。フェミニズム小説なのだけれど、「だから男性は〜〜」という非難するのではなく、女性の強さを感じさせてくれる内容です。

「水底の橋〜鹿の王」上橋菜穂子著
出版されてすぐに購入していたのですが、旅行中に読もうとがまんしていました。ホッサムとミラルの関係はどうなるのか? リムエッレはオタワル医術をどう守っていこうとしているのか? 医術、宗教、政治はどう影響しあうのか? 「人を救う」とはどういうことか? そんな問題を提起する物語です。上橋さんの小説はいつも問いかけ。ハッピーエンドなのだけれど、決して答えを出さない。そこが好きです。

「あの素晴らしき七年」 エトガル・ケレット著 秋元孝文訳
ケレットの日記のような、エッセイのような、超短編小説のような一冊。息子が生まれ、父親が癌を宣告されて亡くなるまでの7年間の出来事をつづっています。ポーランドのユダヤ人で、戦争中に収容所を経験して生き延びたお父さん、イスラエルで生まれ育った息子、世界的人気作家&映画監督になって世界中を飛び回るエトガル、喧嘩しながらも支え合うエトガルと妻、家族の話を中心に、ユダヤ「人」であること、イスラエルで暮らしていること、ユダヤ教との関係、ヘブライ語で書くということ(エトガル・ケレットはすべての作品をヘブライ語で書いている)そんなことをユーモアたっぷりに語っています。実は再読。開いたページから1、2篇呼んで、なんだかほんわかして、でも突き刺さるものがあって、1日刺さったものについて考える、それが快感、という小説です。

「ヒストリエ」10冊 岩明均
アレクサンダー大王の副官だった実在の人物エウメネスの生涯をたどった漫画です。「寄生獣」の岩明先生がデビュー前からあたためていた題材らしい。寄生獣はまったく私ははまれませんでしたが、こちらはおもしろい。まだ続くんですよね、待っていればいいんですよね?

「憂鬱な朝」全8巻 日高ショーコ
フランスにいく前にギリシャを旅していたのですが(だから「ヒストリエ」をダウンロードしていったわけですよ)同行者がBLを読みまくっていて、以前から勧められていたこれをわざわざギリシャでダウンロードして読みました。サントリーニ島での思い出は久世暁人と桂木との関係で頭の中が彩られましたよ。たしかにおもしろかった!!でもBLにははまれないかもしれない。

「アメリカーナ」 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 著 くぼたのぞみ訳
これも再読。アディーチェのたぶん最高傑作、いまのところの。イフェメルとオビンゼの関係を軸にした大河ドラマなのだけれど、同時にアメリカにおける「黒人」と「白人」(かっこつきにしている。肌の色だけでそんなに単純な分け方はできない)、アフリカとほかの欧米世界、旧世代と新世代、それらの関係を軸にした大河ドラマといってもいい。

「ベルリンは晴れているか」深緑野分著
うーん、はまれなかった。なぜだろう? ユダヤ「人」迫害についての掘り下げが浅いからかなあ。主人公にも共感できず。でもきっと小説としてはおもしろいのだろう。

ほかにも田辺聖子にオマージュを捧げて「姥ざかり」と「姥ときめき」、アディーチェの「アメリカにいる、きみ」なんかも読みましたが、ちょっと疲れてきたのでこのあたりでメモおしまい。