えーっと(ちょっと照れてる)、先日、無事に書道、漢字部門で師範になりました。
 1年に1回行われる昇段級試験を受け始めて11年目です。まあまあ早いほうかな。試験を受け始めるときに「師範にたどりつくまで最低10年かかる」と言われていたから、11年なら早いほうなんだと思います。
 この11年間、毎月一度も欠かさずに課題を提出してきたことが自慢です。仕事の締め切りとの戦いで徹夜が続いても、父が亡くなる前後の嵐のような月日の間も、娘と1歳児と同居していた時期も、次女が里帰り出産していた時期も、海外に出かけていても、とにかく、毎月の課題は提出していたことが、11年目の師範試験合格につながったのだと密かに自分をほめています。
 課題提出もですが、2ヶ月に及ぶ試験の準備も、年2回の作品展への応募も「あー、もう無理かも」と休みたくなり、投げ出したくなる誘惑にかられることが何回もありました。そのたびに自分に言い聞かせたのが「言い訳を探さない」ということです。
 言い訳はいっぱい作れるのです。
「たかが趣味でしょ? そんなに無理してからだを壊すなんてバカみたい」
「仕事が忙しすぎる。優先すべきは仕事の締め切りでしょ?」
「子守りにおさんどんに親介護、その上書道まで、そりゃ時間が足りないわ」
「ちょっと休んだって大丈夫。人生長いんだから、時間ができたときにやればいいじゃないか」
「休んだって誰かに迷惑をかけるわけじゃなし、むしろ続けるほうがまわりに迷惑かも」
 そういう言い訳を自分に許さない、とまなじり決して無理したわけでは、実はないのです。
 筆を持つことは、私にとって大きな癒しです。癒しっていう言葉は嫌いだけれど、でも、癒しとしかいいようがない。紙を広げて、墨を筆にふくませながら、これからどんな言葉を、どういう風に書こうかなと考えるのは、私にとって心が豊かになる時間でした。
 仕事を終えて、家族が寝静まり、深夜に毛氈広げて筆持つ時間がどれだけ私をなぐさめてくれたか。精神的に追い詰められ、感情が乱れているときに書いた作品は決してよい出来ではなかったけれど、それでも筆を持って書いていくうちに、少しずつ気持ちが鎮まってくることが何度もありました。それに「今週も筆を持てた」「今月も課題を出せた」ということが、自信にもつながりました。
 いま思うと、この11年間、課題と作品を出し続けられるように、健康に気を配り、時間とお金をやりくりするようになったのも収穫です。太極拳を始めたのは、書道の作品制作で腰痛になったことがきっかけでしたが、書道の先生に「からだの使い方がわかってきたね」と言われるようになっただけでなく、腰痛や肩こりに悩まされることがなくなりました。飲みに行ったり、テレビの前でだらだら過ごすことも少なくなりました。
 「師範、合格したよ」と昨日娘たちに自慢したら、長女から「こつこつがんばりつづけた結果だね。休むことなく、投げ出すことなく、続けていくのがママのすごいところだよ」と褒められました。一番うれしいお祝いの言葉だったかな。
 でも、先生に言われたとおり、師範合格はやっとスタート台に立った、と言うだけです。
 ここからようやく本格的な精進の日々が続いていきます。
 これからも言い訳なしで多少無理をしながら、楽しく筆を持ち続け、いま以上に豊かな時間を過ごしていきたいです。