「13坪の本屋の奇跡〜「闘い、そしてつながる」隆祥館書店の70年」
木村元彦著 ころから
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 1999年には全国に約23,000軒あった書店は、2018年には約8,000軒まで減ってしまったそうです。 紀伊國屋やジュンク堂などの大手はともかく、消えたのは町の書店です。私の家の近所の店も、1999年に閉店しました。
 本が売れなくなったから。そもそも出版不況だし。そう軽く考えていました。
 本を書く仕事をしているにもかかわらず、本を読まないと生きていけないというくらいの本好きなのにもかかわらず、私はなぜ町から本屋が消えていくのか、本の流通がどうなっているのかを真剣に考えていなかったのです。
 それが「13坪の本屋の奇跡」を読んで目が覚めました。
 13坪の本屋とは、大阪のオフィス街、谷町六丁目にある隆祥館という本屋さんです。二村善明さんが戦後間もないころに開業した本屋で、いまは娘の二村知子さんがついでいます。
 先日、大阪に行ったときにのぞいてきました。「13坪の本屋〜」でも書かれているように、品揃えがすばらしい。教育、地元大阪の歴史、原発、スポーツ(二村知子さんは元シンクロナイズドスイミングの選手)というジャンルわけにもうならされたし、新刊本でも「なるほどそうきましたか」というような選択です。言ってみれば「筋が通ったラインアップ」。
 二村さんに「おすすめの本がありますか?」と聞いたら、本の内容と著者の姿勢についてツボをおさえて紹介してくださり、この人は相当読み込んでいる人なんだな、と感じ入りました。結果、これまで私が手を出さなかったジャンルの、知らなかった著者の本を6冊購入。あの西宮の本屋のおじさん以来、本屋さんと本の話をして、すすめられた本を買いました。
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 なぜ町の本屋が消えていくなかで、隆祥館は生き残っているのか。
 それは故人となられた二村善明さんと、娘の知子さんが、出版不況になって以来、小さな書店であるほど苦しめられる取次経由の本の流通と取引慣行に対して闘ってきたからです。
 本書で私が一番驚いて怒りを感じたのは、取次(トーハンと日販)の「ランク配本」と「見計らい配本」という慣行です。「ランク配本」とは、月商の高い書店にはベストセラーや売れる本が多く配本され、月商が低い店には売れる本がなかなか回ってこない、という慣行です。100坪の大手書店と13坪の書店では当たり前ですが、トータルの月商はまったく違います。でも月商ランクが高い店には、売れる本がどんどんタイミングよく入ってくるけれど、小さな書店には入ってこないとなると、ますます月商格差は広がるばかり。ましてやAmazonでポチるのが本の買い方となってしまうと、ベストセラーがまずまわるのは書店ではなく、電子空間ということになってしまいます。
 「見計らい配本」とは、書店が注文していない本を「見本」という名目で取次が勝手に送ってくる慣行です。注文していなくても、取次から配本されてきたら書店は取次にその代金を支払わねばなりません。並べたくない、売りたくない本なら返本せざるをえないのだけれど、その送料は書店もちです。取次に苦情をいったら、今度は売りたい本も回してもらえなくなるかもしれません。
 私は旅行先で本屋に行くのが趣味なのですが、ひなびた町の小さな書店にヘイト本がどっと積まれているのをみて、これまで「書店主はこういう思想の持ち主なのか」と素通りすることが何回もありました。が、「見計らい配本」について知ってからは、思い切って中に入って、その土地の文化や歴史を紹介したガイドブックではない本を探して購入しようと思っています。
 「13坪の本屋〜」では、こういったおかしな流通システムと出版不況にもめげずに書店を続けてる二村知子さんが、本を書く人と読む人をつなげるために定期的にトークイベント「作家と読者の集い」を開催していることが紹介されています。第2部「本屋がつなぐ」には、過去のトークイベントに出演した4人の作家たちと二村さんの講演録がおさめられています。藤岡陽子さん、小出裕章さん、井村雅代さん、鎌田實さん、という4名の人選にも、そして書き手に投げかけられる二村さんの質問や感想も、「筋が通っている」ことに感心します。

 感想その1に書いたことをもう一度繰り返します。
 本はこころの栄養になるべきものです。こころが潤い、育ち、力を得るために、本は欠かせない。
 そういう本を売っている店が、子どもやお年寄り(私も仲間入りしています)の足で歩いていけるところにある町こそ、住みたい、住みよい町なのではないでしょうか。
 書店を滅びさせてはいけない。
 本のことが話せて、栄養になる本をすすめてくれて、何より本を愛する書店員さんがいる書店が、これからも残っていけるように、本の作り手である出版社も、書き手も、流通にかかわる人たちも、売り手も、何よりも読み手も何かしら行動を起こすときが来ているのだと思います。