6月11日(木)
アメリカでジョージ・フロイドさんが警官に首を押さえつけられて窒息死してから、世界中で「BlackLivesMatte」(黒人の命もたいせつだ)のデモが繰り広げられている。
BlackLivesMatter、BLMのデモは21世紀に入ってからも何回も繰り返し起こってきたし、オバマさんが大統領になってからも警官が黒人に暴力をふるって死にいたらしめ、それでも正当防衛で警官が無罪釈放される事件(あえて事件という)は後をたたなかった。
以前はそういった警官による黒人への暴力を「アメリカの人種差別」というおぼろげなイメージ(今思えばとんでもない偏った見方)しかなかったのだが、NHKBSでアメリカの「刑務所ビジネス」のドキュメンタリーを見たときに、いやいやそこには人種差別どころではないものがあるぞと気づいた。増え続ける受刑者に刑務所が追いつかないために、民間経営の刑務所が次々とつくられ、そこに大手企業が続々参入して巨大産業になっている実態を暴いたドキュメンタリーだったが、その背景にある歴史や法律まで踏み込んで、アメリカの暗部(どろどろのウミといってもいい)を描いたのが映画13th 憲法修正13条」だ。
 2016年公開だというから、今回のデモより前に制作された映画なのだ。
 アメリカ合衆国憲法修正13条は、(大雑把に言うと)南北戦争終了後に廃止されたはずの奴隷制が南部の州では残り続けていることを懸念したリンカーン大統領(当時)が、人種に関係なく、アメリカの市民権を持つものは皆が平等に扱われることを憲法で保証するよう修正法案を提出し、暗殺後となったが1865年にやっと議会を通過した条項だ。
だが、この条項には「法を犯した者をのぞき」という言葉が入っていた。
そしてたった数語のこの言葉が、現在にいたるまで人種差別をより深く広く人々の間に根付かせる「温床」になってしまう。
19世紀末から、一部の州では解放された奴隷たちを「犯罪者」として刑務所に収監し、鎖でつないで無給で働かせることが横行していた。
たまにそれを問題視する政治家はいないでもなかったが、根強い人種差別意識を持つ白人有権者たちの票を獲得するためには、黙認するしかなかったし、ニクソンのように、もっと助長するような法律を通す大統領も後をたたなかった。
1981年、ごりごりの保守だったレーガンが大統領に就任し、レーガノミクスで、それまで公が担っていた「事業」が民営化されていく。刑務所もその一つだ。刑務所ビジネスには大手企業がこぞって参入し、受刑者の労働搾取に始まり(マイクロソフトも受刑者に製造を担わせていた)、食品、衣服、通信(刑務所からの通話料は外でかけるものの10倍)から教育まで大手企業は続々と利権を勝ち取っていく。中国の工場で生産するよりもコストが安く(なにせ労賃はただだ)、品質管理もしやすいし、流通も管理も国内でできるから簡単だ。刑務所ビジネスは、人々の「有色人種は犯罪者予備軍」という偏見を後ろ盾にした警官がほんの軽い罪でも黒人やラテン系の男性を逮捕して、ただ働きさせる労働力として民間の刑務所に送り込むことで発展していった。
 そして新自由主義が市場の「憲法」になると、受刑者の数は急増する。なぜなら「経済の発展」とともに労働力の確保が急務となったので、受刑者=労働者の数が減らせなくなってしまったからだ。1980年からこの映画が作られた2016年までに、受刑者の数は全米で4倍にまでふくれあがり、そのほとんどが有色人種だ。
 受刑者はあらゆる権利を剥奪される。なぜなら犯罪者の市民権を剥奪することは「憲法修正13条で認められている」からだ。
 なぜアメリカは人口に対する受刑者率の高さにおいて、世界で群を抜いているのか?
 なぜ黒人とラテン系の受刑者が白人の7倍もいるのか?
 なぜたびたび問題になり、議会でも取り上げられるのに、受刑者数は減らないのか?
 そしてここが肝心。なぜ、司法は機能しないのか?
黒人をはじめとする有色人種に対する根強い、歴史的な人種差別がアメリカにある、と言うだけではない。
 そこに「ビジネス」つまり金儲けの力が働いているからだ
 そして、産獄共同体を「ビジネスモデル」の基盤に据える企業のロビー運動があり、また選挙に勝つための「戦略」として「犯罪には断固とした姿勢でのぞむ」と強くアピールする大統領がつぎつぎと当選し、「公約」にそって「犯罪者と受刑者を増やせるような法律」をつぎつぎと作るからだ。法律と司法が警察権力を擁護して、受刑者数の確保に協力しているからだ。ニクソン、レーガン、ブッシュ、そしてクリントン(ストライク・スリー法だ!)も、全員が加担した。
 唯一、オバマさんは例外だった。彼だけはみずから刑務所を訪れ、受刑者を減らすために力を注ぐと声明を出したために産業界から総スカンをくった。オバマさんが「弱腰」とののしられた背景には、人種差別に根ざした偏見以上に、産獄共同体を規制しようとしたことがある。
 刑務所ビジネスは、いまやアメリカの基幹産業であり、「産獄共同体」という恐ろしい名称さえもつけられている。
 似たようなことが、アメリカだけでなく日本でも、そして世界の至る所であるのではないか。
今こそこのドキュメンタリー映画を見るべきだ、と強く思うのでYouTubeであげさせてもらう。(この動画アップが違法かどうかわからないので、調べて違法だったらすぐ下げます)