今年一番最初に映画館で見た映画が「ケイコ、目を澄ませて」でした。聴力に障害を持つ女性、ケイコがボクサーを志す、という話。実話をもとにして、岸井ゆきのが見事に演じてました。聴こえないことが格闘技にどんな影響があるのか(いや、影響があるなんてものじゃないけれど)。男性ばかりのボクシングジムに入って、どうやって自分の居場所(練習場所や対戦試合)を確保していくか。反対する家族、とくに母親との葛藤。ミュージシャンの弟とその恋人とのあたたかい関係。そしてボクシングジムのオーナー(三浦友和好演)のまなざし。
健常者の私は、障害や病を持つ人たちに対してつい自分とは一線を引いてみてしまって、同情したり、かばったり、何かできることはないかと探したりするけれど、この映画でケイコはそういう健常者の上から目線をきっぱり断って(ときには過剰なほどの断り方でコーチやスポンサーを怒らせる)「ちゃんと普通に扱ってほしい」という姿勢を示します。今年の私の個人的テーマが「ケア」だったので、ケアする人vsケアされる人の関係を自分に問い直す意味でとても興味深かったです。
(中断しましたが、再開)
映画館で観た映画でもうひとつ印象深かったのが
「シモーヌ」というフランスの女性政治家を扱った映画です。「フランスには3人の偉大なシモーヌがいる。シモーヌ・ヴェイユWeil(哲学者)、シモーヌ・ド・ボーヴォワール(哲学者、作家)、そしてもうひとりのシモーヌ・ヴェイユVeil(政治家)」と言われるそうですが、この映画が扱っているのは政治家のシモーヌ・ヴェイユ。
1927年、フランス南部の裕福なユダヤ系家庭に生まれた育ったシモーヌは、1944年ナチス・ドイツのフランス占領によって16歳で収容所に送られます。父と弟と引き離され、姉の一人と母とともにアウシュヴィッツに送られ、ソ連軍がアウシュヴィッツにやってくると「死の行進」が始まってベルゲン=ベルゼン収容所に移送される。母は結局収容所で亡くなり、父と弟も行方知らずのまま。でも姉とシモーヌは生き延びるのです。
その後パリ大学で法学を専攻し、ポリテクニーク(フランスの政治家・司法・上級官僚養成機関)に学びます。そこで夫と出会って結婚、当時の女性にはめずらしいトップクラスの高等教育を受けながら仕事をあきらめて専業主婦になって3人の子どもを出産。しかし自身が戦争で受けた迫害の体験から、経済的・社会的・性的な差別を受ける人たちのために働かなくてはという使命感は消えることなく、夫や親族、周囲の猛反対を受けながら必死に勉強して治安判事の資格をとるのです。結婚当初からですが、もうね、夫が最悪。悪気はなくて、妻を愛しているとか言いながら、妻の使命感を「女のやることか」とか鼻で笑い、自身もユダヤ系にもかかわらず妻の強制収容所体験への理解がまったくなし。そんなだから戦後すぐに「出世の道だ」とかいってドイツに赴任したりする。妻の姉はその話を聞いて「ドイツに住むだって! 信じられない!」と怒り狂うのだけれど。
刑務所のあまりの悲惨さに衝撃を受けて、収容された人たちの人権擁護を訴え、1970年代には人工妊娠中絶を合法化し(とくに宗教界との闘いがすさまじかった)女性の社会的地位向上に力を尽くし、その後欧州議会議長に就任して欧州統合を推進。私は欧州議会で議長に就任するにあたっての演説で涙腺決壊しました。もうすばらしすぎて。
「私はこのために生まれてきた」と言えるだけのものが私にはあるだろうか、と映画館を出てから1時間くらい街をさまよって考えました。いまのところは、ないなあ。
配信ドラマではここでも紹介した韓国ドラマ「クイーン・メーカー」(Netflix)がいまのところ私のなかでは一番です。最近見たなかでおもしろかったのは「ハイジャック」(イギリスのドラマ。AppleTVで視聴)かな。イドリス・エルバが実はとても好き。「刑事ジョン・ルーサー」はずっと見ていました。(今年公開の映画「フォールン・サン」はいまいちだったけれど)
海外にも行けるようになり、今年は外で友人たちと食事する機会も多くなったためか、配信ドラマや映画を見ることが減りました。Netflixも見たいと思うコンテンツが少なくなった以上に、ゆっくりドラマを見たりする時間が減ってしまったのだろうなあ。
健常者の私は、障害や病を持つ人たちに対してつい自分とは一線を引いてみてしまって、同情したり、かばったり、何かできることはないかと探したりするけれど、この映画でケイコはそういう健常者の上から目線をきっぱり断って(ときには過剰なほどの断り方でコーチやスポンサーを怒らせる)「ちゃんと普通に扱ってほしい」という姿勢を示します。今年の私の個人的テーマが「ケア」だったので、ケアする人vsケアされる人の関係を自分に問い直す意味でとても興味深かったです。
(中断しましたが、再開)
映画館で観た映画でもうひとつ印象深かったのが
「シモーヌ」というフランスの女性政治家を扱った映画です。「フランスには3人の偉大なシモーヌがいる。シモーヌ・ヴェイユWeil(哲学者)、シモーヌ・ド・ボーヴォワール(哲学者、作家)、そしてもうひとりのシモーヌ・ヴェイユVeil(政治家)」と言われるそうですが、この映画が扱っているのは政治家のシモーヌ・ヴェイユ。
1927年、フランス南部の裕福なユダヤ系家庭に生まれた育ったシモーヌは、1944年ナチス・ドイツのフランス占領によって16歳で収容所に送られます。父と弟と引き離され、姉の一人と母とともにアウシュヴィッツに送られ、ソ連軍がアウシュヴィッツにやってくると「死の行進」が始まってベルゲン=ベルゼン収容所に移送される。母は結局収容所で亡くなり、父と弟も行方知らずのまま。でも姉とシモーヌは生き延びるのです。
その後パリ大学で法学を専攻し、ポリテクニーク(フランスの政治家・司法・上級官僚養成機関)に学びます。そこで夫と出会って結婚、当時の女性にはめずらしいトップクラスの高等教育を受けながら仕事をあきらめて専業主婦になって3人の子どもを出産。しかし自身が戦争で受けた迫害の体験から、経済的・社会的・性的な差別を受ける人たちのために働かなくてはという使命感は消えることなく、夫や親族、周囲の猛反対を受けながら必死に勉強して治安判事の資格をとるのです。結婚当初からですが、もうね、夫が最悪。悪気はなくて、妻を愛しているとか言いながら、妻の使命感を「女のやることか」とか鼻で笑い、自身もユダヤ系にもかかわらず妻の強制収容所体験への理解がまったくなし。そんなだから戦後すぐに「出世の道だ」とかいってドイツに赴任したりする。妻の姉はその話を聞いて「ドイツに住むだって! 信じられない!」と怒り狂うのだけれど。
刑務所のあまりの悲惨さに衝撃を受けて、収容された人たちの人権擁護を訴え、1970年代には人工妊娠中絶を合法化し(とくに宗教界との闘いがすさまじかった)女性の社会的地位向上に力を尽くし、その後欧州議会議長に就任して欧州統合を推進。私は欧州議会で議長に就任するにあたっての演説で涙腺決壊しました。もうすばらしすぎて。
「私はこのために生まれてきた」と言えるだけのものが私にはあるだろうか、と映画館を出てから1時間くらい街をさまよって考えました。いまのところは、ないなあ。
配信ドラマではここでも紹介した韓国ドラマ「クイーン・メーカー」(Netflix)がいまのところ私のなかでは一番です。最近見たなかでおもしろかったのは「ハイジャック」(イギリスのドラマ。AppleTVで視聴)かな。イドリス・エルバが実はとても好き。「刑事ジョン・ルーサー」はずっと見ていました。(今年公開の映画「フォールン・サン」はいまいちだったけれど)
海外にも行けるようになり、今年は外で友人たちと食事する機会も多くなったためか、配信ドラマや映画を見ることが減りました。Netflixも見たいと思うコンテンツが少なくなった以上に、ゆっくりドラマを見たりする時間が減ってしまったのだろうなあ。
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