Glamorous Life

グラマラスライフ 実川元子オフィシャルサイト おもしろい本、どきどきする試合や映画、わくわくする服に出会えたら最高に幸せ

女子サッカーを追いかけて

アディショナルタイム(11分!)に5点目が入ってから、そそくさと帰り支度を始めて、試合終了前にスタジアムをあとにしました。
その晩はよく眠れず。
始まったばかりなのにどん底。
これがどん底で、これからベクトルは上に向くと信じたい。
慢心はこわいね。私が一番慢心していたかも。

ということで、しばらくまたガンバを封印します。
バイエルンミュンヘン谷川選手の活躍で心を癒そう。

1月25日(土)エディオンピースウィング広島で開催された皇后杯決勝 浦和レッズレディースvsアルビレックス新潟レディースを観戦しました。
13時キックオフなので、6時前に自宅を出て、8時10分羽田発の飛行機で行ったのですが、なんとほぼ満席! しかも私のまわりには浦和ユニ(もちろんレディースの)を着用し、赤黒浦和グッズをつけてタオマフを巻いた方々がいっぱい。な、な、なんなんだぁ〜〜〜! 浦和サポはレディースの応援でもすごいです。
広島空港は山の上にあって、市内まで1時間近くバスに乗ります。広島に昨年オープンした新スタジアムは、50分バスに乗ったところのバスセンターで降りるとすぐ。バスセンターはそごう百貨店の入っているビルにあるので、バスを降りると地下に降りておそばやさんで腹ごしらえをしてスタジアムに。
美術館や広々とした公園がある先にあるスタジアムに近づくにつれてテンションがあがりました。28000人収容のサッカー専用スタジアムですが、威圧感がなく周囲の景色に溶け込んでいます。街のほぼ中心部にあり、しかもいわゆる「市民の憩い」の広場のなかにある感じ。試合後に新幹線広島駅まで歩きましたが、登り下りのない平地を歩いて40分で駅ホームにつきました。バスに乗ったら30分だそうです。新幹線にも飛行場にもかなりアクセスがいい。
さて、試合ですが、準決勝で日テレベレーザをPKでやぶって勝ち上がってきた新潟と、昨年決勝でやぶれたINACを4−1で圧勝した浦和で、どちらの試合も録画で見ていた私は、浦和断然優勢と見ていました。実はベレーザが決勝に来ると信じてチケットを購入していたので、座ったのは新潟から応援に駆けつけた方たちが多いメインの席。
WEリーグでベレーザvs新潟@西が丘を見たときにはベレーザが圧勝していたのだけれど、そのときの経験を皇后杯準決勝では選手たちがみごとに生かしていた感じがします。先制されてもあわてず、最後までハイプレスをかけて、ボールを奪ったら一気に前線に送る作戦(?)が実って試合終了間際にセットプレーから得点し、PK戦に持ち込んで見事に勝ちました。
そしてこの試合でも同じようにハイプレスをかけ、奪ったらすぐに前線へを実直に全員でやり続けました。
試合序盤は浦和のとくに攻撃の力が新潟を圧倒し、ワントップの高橋はな選手とトップ下(?)の塩越選手のコンビネーションで何回も新潟ゴールに迫り、11分には2人で崩して先制点。
ところがその後、なぜか新潟が押し込むようになるのです。左右のサイドをワイドに使って浦和の守備を間延びさせ、浦和があたふたしたところをついて28分に滝川選手が見事なゴラッソ! 
その後は新潟ががぜん勢いづいて何回も浦和陣内で小気味のよい攻撃を続け、後半に入ってもその勢いは止まりませんでした。浦和はGK池田選手のワンダフルというよりミラクルなセーブがあってなんとか失点を防ぎましたが、試合開始直後に見せた攻撃の勢いは延長に入ってもなかなか見せられませんでした。
結局PK戦となり、5人全員が決めた(しかも最後のPKはGK池田選手)浦和に対し、新潟は1人失敗して惜しくも準優勝。
新潟は決勝に進むのにふさわしいチームでした。もちろん浦和は強かったし、なんというか選手がエリート揃いの風格がありました。でも圧倒的に強かったというわけではない。
クラシエカップではレッジーナが優勝したし、女子サッカーはかつての3強(日テレベレーザ、INAC、浦和レッズレディース)から、5強? いや、カップ戦でもリーグ戦でもどこが抜けてくるかわからない時代に入ったな、全体のレベルが上がったんじゃないかな、と思いながらスタジアムをあとにしました。
ほんと、女子サッカーはレベルがあがっていることを実感した決勝の好ゲームでした。
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 いまドミニカ共和国でU17 FIFA Women's World Cupが開催中です。日本の17歳以下の女子チームも出場しています。日本時間で今朝5時からグループリーグ第2戦、対ブラジル戦があり、日本は2−1で勝利しました。でも第一戦のポーランド戦が引き分けだったので、決勝リーグに進めるかどうかはつぎのザンビア戦の結果次第です。
 今年はパリ五輪に始まり、つい先日コロンビアで開催されていたU20 FIFA女子ワールドカップ、そして今のU17ワールドカップと続き、なでしこからヤングなでしこ、リトルなでしこと女子サッカーの国際大会の試合観戦(もちろん配信ではありますが)が続いています。
 生観戦では、WEリーグが9月に開幕し(女子プロサッカーリーグはいち早く秋春制です)、その応援に現地に出かけてます。一応、よく見に行っているのは日テレベレーザの試合ですが、昨日はジェフ千葉レディースvs浦和レッズレディースの試合を観に、久しぶりにフクアリ@千葉県蘇我へ。フクアリ、相変わらずいいスタジアムでした。
 それに加えて、DAZNで視聴できるUWCL(UEFA女子チャンピオンズリーグ)で、日本人選手が所属するマンチェスター・シティやローマやチェルシーの試合も見なくちゃいけないし(いや、別にhave to じゃなくてbe willing to なんだけれど)早寝早起きが常態になってきそうです。

 2019年にフランスで開催された女子ワールドカップを観戦してからすっかり女子サッカー追っかけになった私ですが、私の目から見てもたったの5年間で女子サッカーの進化ぶりはすごいものがあります。何かと男子と比べられて、女子は男子よりもスピードがない、キック力が弱い、フィジカル弱い、だからおもしろくないとか言われますが、いやいや、女子サッカーには女子サッカーの進む道があるんだよ、女子サッカーは女子サッカーとしておもしろいんだよ、ということを証明するような試合が多くなってきました。テクニックや戦術(理解)のレベルが上がっているし、とくに若い選手たちのサッカーという競技に対する理解力が深まっている、と感心します。
 U20の大会を見たときも思ったのですが、今朝見たU17、つまり高校生たちの試合展開の読みとか、相手との駆け引きとか、思わず「うまいなあ」とうなってしまうような場面が散見されました。もちろんまだ進化中なので、足りないところはいっぱいありますが、それさえも伸びしろに見えてきます。とくに日本女子の選手たちの進化はすごいなと驚かされるばかり。
 オババの私は、試合で「わ、すごい!」というシーンに出会うと(必ずしもゴールだけでなく、ディフェンスやパスなどでも)、感激して涙ぐんじゃったりするのです。
 女子サッカー、これからもっと伸びていってほしいです。そのために私ができるのは、せっせと試合を観て、もっともっと感激することですね。
 来週、10月26日(土)には国立競技場でなでしこジャパンvs韓国女子の親善試合があります。もちろん私は行きます。また涙がじわーんとしちゃうんだろうな。
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新刊がもうすぐ出ます。
「サッカー・グラニーズボールを蹴って人生を切りひらいた南アフリカのおばあちゃんたちの物語
ジーン・ダフィー=著 実川元子=訳
平凡社

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南アフリカ北東部リムポポ州の村に住む高齢女性たちは、ストレスと加齢に起因する高血圧や糖尿病に悩まされ、医師から運動を勧められていたが、とてもその余裕がないまま病状を悪化させていた。
自らも結腸癌で通院していたベカ・ンツァンウィジという女性は、病院でそんな高齢女性たちの姿を見て心を痛め、これはなんとかしなくてはと立ち上がった。まず、女性たちをなだめすかし、病院裏手の空き地で自分といっしょにエクササイズをしようとうながした。
あるとき同じ空き地でサッカーをしていた少年たちが蹴ったボールが一人の女性の足元に転がってきて、その女性が蹴り返した……それがサッカー・グラニーズが生まれるきっかけだ。(グラニーズは英語でおばあちゃんの意味)
少年たちに頼み込んでボールの蹴り方やルールを教えてもらううちに、女性たちはしだいにサッカーにのめりこんだ。からだを動かすことで健康を取り戻し、集まっていっしょにボールを蹴って、おしゃべりをして悩みを打ち明ける仲間ができたことで、女性たちは自尊心も取り戻した。
 ベカはついに高齢女性たちのサッカーチーム「バケイグラ・バケイグラ」(バケイグラは南アフリカの言葉でおばあちゃんの意味)を結成する。コーチやチームドクターを自腹を切って雇い、村をまわって長老たちを説得し、いくつもの「バケイグラ・バケイグラ」をつくって、地域対抗の試合をするまでになった。
 南アフリカの高齢女性サッカーチームに注目し、BBCが放映したニュースを見たアメリカ在住の白人女性ジーン・ダフィー(著者)は、地元マサチューセッツで開催される成人のためのサッカー大会「ベテランズ・カップ」に「バケイグラ」を招待しようと思いつき、ベカに連絡をとる。
 ジーンは子どもたちのサッカーの試合をライン際で応援するのに飽き足らず、30代でチームに入り、15年も毎週試合を欠かさないサッカーウーマンである。チームや地元のサッカー協会の支援を受けて、ジーンたちは数々の困難を乗り越えてベカが率いる「バケイグラ・バケイグラ」の20人あまりのおばあちゃんたちをアメリカに招待するのに成功する。
 その後もジーンたちのチームと南アフリカのサッカー・グラニーズとの交流は続き、昨年には南アフリカで世界各地のサッカー・グラニーズのチームの国際大会まで開催された。
 
 南アフリカの黒人高齢女性は人種差別、性差別と年齢差別という三重の差別を受けている。アパルトヘイトの時代を生き延びた女性たちは、過酷な人種差別政策と、「女の子は学校に行かなくてもいい」という社会の性差別のために教育を受ける機会が奪われた。本書で紹介されるサッカー・グラニーズの大半は小学校すら出ておらず、字が書けない読めないために就業がかなわず、自宅の庭に植えた野菜で飢えをしのぐしかない、という人が大半だ。歳をとって病気がちになると、コミュニティの人たちに殺されてしまうこともある。
 また1990年代から2000年代はじめにかけて南アフリカではHIV/エイズが猛威をふるい、子どもを亡くしたおばあちゃんたちは、孫やときにはひ孫の面倒まで見なくてはならなかった。南アフリカの人種差別、そこに起因する貧困と暴力のすさまじさを、サッカー・グラニーズたちはインタビューで淡々と語る。
 それなのに本書は明るさに満ちている。ボールを蹴っているおばあちゃんたちは、はじけんばかりの笑顔だ。その人生は理不尽な暴力にさらされて苦難の連続だったはずなのに、表情が底抜けに明るいだけでなく、前向きだ。
 グラニーズたちはサッカーをすることで仲間を見出し、さまざまな苦難を乗り越えて生き延びた自分を肯定し、生き延びたことを感謝している。それがグラニーズたちを輝かせている。
 訳しながら、何回となくこみあげてくるものがあった。校正しながらも、涙が出てくる箇所があった。
 著者が本書の最後を締めた言葉を、私は噛み締めている。
「人生をどう思うかって? もちろん、生きることは最高だ!」

 



なでしこジャパン、オリンピック、グループリーグの初戦、スペイン戦を逆転されて敗れたために、ぜったいに勝たねばならない試合となったブラジル戦。
0時からの試合のために、10時前に就寝。仮眠をとって12時すぎにテレビの前へ。
あれ? 私の推しである藤野あおば選手がいない??? 同志から「サブにもいません」とメッセージが来て、なんかひたひたといやな予感が。
前半はボール保持率がブラジル70%、日本30%で30分ほど経過し、徐々に攻勢を強めたなかで、負傷離脱の清水選手に代わって、バックアップメンバーから加わった守屋選手が左サイドから中央に切り込んでシュートしたところ、ブラジルDFのハンド判定でPKゲット。
ところがこの試合で絶不調な田中美南選手がこれを外してしまう。えーっとPKに詳しくなっている私から言わせると、まずGKを見ていない、笛が吹かれる前に後ろにさがっている(笛が吹かれて、GKとの駆け引きをしてから後ろに下がり、集中力を高めるのが定石)、助走が長すぎる、というPK失敗確率があがる蹴り方でしたね。残念。
前半は0−0で折り返し、後半は攻勢を強める日本。ところが相手陣内のペナ外でボールを奪われ、ブラジルのレジェンド、マルタに運ばれて並走してきた選手にシュートされて先制を許してしまう。
その後は「勝たねばならない」重圧からか、GKの山下選手がふだんならありえないようなミスをしたり、攻撃はいまひとつかみあわずにもどかしく、守ってはあぶなっかしい展開のまま試合終盤へ。
でも80分に谷川選手が交代で入ってくると、いきなり攻撃の強度が上がりました。そして入ったアディショナルタイム。ペナルティ内での谷川選手のフェイントについていけずすっ転んだブラジル選手の手にボールが当たり、またまたPKゲット。これをキャプテン、熊谷選手が落ち着いて決めると、ボールをすぐに抱えて全速力でセンターサークルに走ります。勝たねばならない試合だから、当然なんだけれど、PK成功を喜ぶ前にセンターサークルに走ったのはさすがキャプテン。
それから2、3分後、清家選手がドリブルでごりごり切り込み、ブラジル選手にボールを奪われ、そこで出されたパスのトラップが少し流れたところに走り込んで、迷いなく足を振り抜いたのが谷川選手!
寝転んで見ていた私は、PKゲットあたりから起き上がったのですが、まだぼんやり画面を眺めていて、ゴールが決まった瞬間はいったい何が起こったのかわからなかった。
NHKの実況の人も、ゴールネットが揺れた瞬間に思わず声が裏返ってました。
もうそれから私は立ち上がって、選手たちといっしょに跳ねましたよ。夜中に2時に。
グループリーグ敗退かとあきらめかかっていた自分が恥ずかしい。
教えられました。安西先生の名セリフは正しかったって。
諦めない心。自分を信じ、仲間を信じる心。
ものすごく青臭くて、書いているだけで気恥ずかしいのだけれど、それを思い出させてくれた逆転のドラマでした。

でもつぎの試合もぜったいに勝たねばなりません。
8月1日午前0時からのナイジェリア戦。
信じて応援するよ、なでしこジャパン

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