Glamorous Life

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観る極楽

いま石内都の写真展、STEP THROUGH TIMEが桐生市の大川美術館で開催中。以前にヴェネツィア・ビエンナーレ日本館に展示された「mother's」の記事で写真を見て衝撃を受けたので、これはぜひとも見なくてはと、10月秋晴れの日に桐生まで行ってきた。
水道山という山の中腹を切り開いて建てられた元社員寮を改装した大川美術館は、入り口の階からくだっていくにつれて、展示されている作品が新しいものになっていく。会場入り口のある3階(?)は1970年代に横須賀の街や建物を撮った「絶唱、横須賀ストーリー」からのモノクロの写真群。1979年に木村伊兵衛賞を受賞し、写真家、石内都の名前を強く印象づけた一連の作品だ。モノクロで撮られた写真にはあまり人が出てこない。というか、人物ではなく、建物だったり、家財道具だったり、無機物が主体。なのに、そこには不在の「人」がおそろしく主張している。
階をくだって、重いガラスの引き戸を開けて「mother's」が展示されている部屋に入ったとたん、私は一瞬息をのんだ。それまでのモノトーンの光よりも影の印象が強かった写真が打って変わって、いきなりあざやかな色があふれる写真となる。モノを撮った写真なのに、人の肉体がなまなましく迫ってくる。真紅の地の長襦袢、ピンクの口紅、レースの透けたランジェリー、赤い靴、手袋……お母さまの遺品だというそれらの「モノ」は、身につけていた人の肉体、だけでなく、生理や日常生活の活動まで映し出しているようだ。
また階を下り、1階の「ひろしま」の展示室で華やかな花柄のワンピースの前と後ろを撮った写真の前から、私はしばらく動けなかった。のどの奥になんかへんなものがつまっているみたいにこみあげるものがある。そのときは撮影された衣服や靴が原爆被災者の遺族が寄贈したものだとは知らなかったのだが、そんな情報に無知であっても、それらの写真には私を揺り動かす力がこもっていた。
もう一度3階に戻って、1970年代の横須賀の写真から、2011年に発表された「ひろしま」まで順に作品を見た。そしてもう一度。回を重ねると、見えてくるもの、感じるものが少しずつ変化する。でも衝撃が薄らぐことはなかった。
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帰りに「写真関係」(筑摩書房)という石内都さんの著書を購入した。石内さんは1947年生まれで私より7歳年上。戦後の生まれではあっても、世代も、歩いてきた道も、吸っていた空気も、あたりまえだがまるでちがう。敗戦によって日本が失ったもの、女性が生きていく道の険しさ、人に寄り添うやさしさ、そんなものが石内さんの写真と文章には詰まっていた。
今年見た展覧会でもっとも大きな衝撃を受けた。おそらくしばらく忘れられない1日になると思う。

7月最後の日だった昨日にながながと振り返り月着(げっき=ひと月の記録。造語かな)を書いたのですが、何回トライしてもアップできませんでした。何なんだよ、ブログは時代遅れってことかよ、と毒づくのはほどほどにして、気を取り直して7月に読んだ本、観た映画やドラマなどについてあらためて記しておきます。

映画館で観た映画は2本。
「90歳、何がめでたい」作家、佐藤愛子さん(すでに100歳を超えられました)が90歳のときに書かれたエッセイが大ベストセラーになり、それに基づいて佐藤さんを草笛光子さんを演じられ、編集者を唐沢寿明さんが演じた映画です。(なぜか「さん」づけしている)書友に誘ってもらって、書道のお稽古の帰りにシネコンで見ました。観客の平均年齢は60歳を超えていたね、きっと。歳を重ねるひとつの姿を描いているのだけれど、40歳以下が見たらピンとこないんじゃないかと思いました。草笛さん(90歳超えていらっしゃる)がきらきらとまぶしいほどに美しく、90歳超えてなお現役社会人を演じているのもどこか絵空事に感じられるのではないかと。でも、映画のところどころに私は老いの現実を感じて、単なるコミカルな映画とだけは受け取れなかったな。

「ピクニックatハンギングロック」1986年に日本で公開され、今にいたるまで映像の美しさと謎めいたストーリー(実話をもとにしている)でファンが多いという映画。監督のピーター・ウィアーはこの映画がオーストラリアだけでなく世界的にヒットして注目を集め、やがてハリウッドに進出してハリソン・フォード主演の「刑事ジョン・ブック/目撃者」を撮りました。私は「ピクニック〜」がオーストラリア映画祭で日本で初公開されたときに観に行き、その後小説も読みました。掘れば掘るほど迷路に迷い込むような映画で、38年ぶりに観ると、最初に観たときや小説を読んだときには「見えていなかった」ものがおぼろげに見えてきたような気がしています。

配信で見た映画は8本ほど。とくに印象に残った2本について書いておきます。
なんといっても印象深かったのは「Perfect Days」ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の話題作ですが、1年に1回くらい見直したいと思ったほどよかった。あらすじを書いたり、役所広司演じる主人公の平山がトイレ掃除の仕事場に向かうときに車内で聴くカセットの音楽についてはもうあちこちで書かれているのでやめておきます。そこで使われている70年代、80年代のロックやソウルも脳に染み入ったのですが、それ以上に子どもたちのはしゃぐ声などの街のざわめきや風が木々を吹き抜けていく音、かすかな鳥の声、風呂屋に響く水や桶の立てる音、などがどんなセリフや歌よりも染み入る「音楽」なのだと思いました。と言いながら、平山が早朝、朝日が昇る時間帯に仕事場であるトイレに向かう高速道路で聴く「朝日のあたる家」の本家The Animalsとlukiによるカヴァーを毎日繰り返し聴いています。音楽だけでなく、役所広司の身体性が目に焼きつくなど映像も美しい。ヴェンダース映画のなかで私は一番好きかも。ほんと染み入る映画です。
「Saint Frances セイント・フランシス」34歳独身、定職なし、パートナーなしの女性が、バイトでゲイ・カップルの6歳の少女の子守りをすることになる。パートナー探しのパーティで知り合った男性とセックスしたら妊娠して中絶することになったり、コンプレックスから苦手意識があった両親と久しぶりに会ったら母親からあたたかいメッセージをもらって感動したり、少女のギター教室に付き添いでいったら教師にひと目惚れしていいところまでいくけれどロクでもない男だとわかって幻滅したり……少女、フランシスやその両親とつきあっていくうちに、人との距離の取り方や、人に甘えることができる大人へと成長していく、とまとめてしまえばそんなストーリー。

読んだ本でガツンと殴られたような衝撃を受けたのは、
ハン・ガン著 斎藤真理子訳(白水社)でした。済州島4・3事件を生き延びた母親の最後の晩年を共に過ごした映像作家のインソンと、光州事件を扱った小説を書き終わって抜け殻のようになったキョンハが、生と死を行き来しながら語り合うという形式。なんてこんな薄っぺらい言葉ではとてもあらわせない。読んでいる間、大きな灰色の霧のようなものに取り巻かれて、前にも進めず、引き返すこともできず、それでは苦しいのかというとむしろ痛痒いみたいな気分のまま読み進みました。一気に読んでしまったのだけれど、もう一度読み直す必要を感じています。
娘に勧められて「七王国の玉座」ジョージ・R・R・マーティン著 岡部宏之訳(早川書房)をいま読書中。ファンタジー好きとしてはこれは読まずに死ねるか本ですね。

酷暑をいいわけに、毎日のように配信で映画を見て、TVerでオリンピックを見て、ちっとも仕事していない。熱中症になるから外に出かけるのは控えて、といわれても、サッカーの試合は見に行ってしまうし、旅行も行ったし、書道をはじめ展覧会にもあちこち出かけています。元気の証明、ということにしておこう。

青森のことをぐだぐだ書いているうちに、ガンバは久保建英選手在籍のレアル・ソシエダードとパナスタで試合をし、ガンバユースは順調にクラ戦を勝ち抜いて明後日には味フィで準決勝。なでしこJapanは残念ながらオリンピック初戦のスペイン戦で逆転負けしました。
レアル・ソシエダード戦では石川選手のスーパーセーブが目立ち、負けはしたけれどガンバも惜しいシュートを何本か放って、おそらく数少ないガンバサポの観客に「う〜〜」と言わせ、興行としてはよかったのではないかと。
クラブユース選手権ではガンバユースが2連覇をめざして準決勝に駒を進めました。あまり機会がないユースの試合が東京で見られるとあって、私は観戦予定。
そしてなでしこJapanはオリンピックの初戦で世界NO1のスペインとあたり、残念ながら逆転負け(涙)清水選手が怪我したみたいで、ほんとほんと心配です。でもね、つぎだ、つぎ! ヤット式メンタル(勝っても負けても試合が終わったら切り替える→忘れる)で明日(正確には明後日早朝)のブラジル戦に照準を合わせてください。

 パリ・オリンピック、ひそかに観戦を考えてあれこれ計画を練ってみたのですが、あ・ま・り・に・も高額。エアチケット、ホテル、国内移動、すべてが円安のせいで高騰しており手が出ず断念。
ま、私はIOCの姿勢にも、そもそものオリンピックのあり方にも首をかしげている人なので、ワールドカップと比較すると「観戦してやるぞ」のエネルギーは半分くらいだってことも影響していますが。
 試合観戦@テレビとなると、生活時間をまた変更しなくちゃならないのでそれが私にとっては重い問題。昼夜逆転させるかなあ

7月19日
早朝に大浴場で温泉に浸かりながら、十和田湖のむこうに日が昇るのを眺め、ヘルシーな朝食をとったあとに休屋まで送ってもらった。十和田現代美術館に向かうバスの出発時間まで1時間ほどあったので、高村光太郎の「乙女の像」を見ておこうと雨の中を湖畔の遊歩道を散歩。
バス停までの帰り道は十和田神社に参拝して、「開運の道」を通った。手を合わせて願うのは、健康とか金運とかではなく、ガンバの運気があがりますようにということ。十和田の神様、聞いてくれるかなあ。
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十和田現代美術館は十和田湖の休屋から奥入瀬渓谷を通って1時間ほど。八戸からはバス(しかも路線バスで学生さんや高齢者の方たちが普通に乗っている)で1時間半くらいかかる。車で直行すれば45分かもしれないけれど、バス停でいちいち停まるので、時間がかかるのだ。そんな不便な場所ではあるけれど、十和田市の中心部は全部が「美術館」。市庁舎も図書館も病院も公園も郵便ポストもバス停も植栽も、すべてがアート! 美術館の展示作品も楽しかったけれど、道を歩きながら「あ! これも作品だ!」と眺めてまわるのもエキサイティングなアート体験でした。
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帰りは八戸から新幹線。東京まで満席で、早割で予約しておいてよかったと思いました。
弘前れんが倉庫美術館には行けなかったから4館巡りではありましたが、五感を十分に刺激されたGOKAN巡りでした。


7月18日(木)
天気予報では青森県滞在中はすべて雨マークだったのに、昨日17日もこの日も晴天。東京に比べれば涼しいが、照りつける太陽は盛夏で日傘か帽子は必須だ。
この日訪れる予定の八戸市美術館の場所は、八戸駅から奥羽本線(もしくは青い森鉄道)で2駅の本八戸駅近く。近くといっても、歩くと10分くらいかかる。しかも宿泊したホテルからすぐだと思っていたら、やはり歩くと10分以上かかるところにあった。
開館の10時までには時間はたっぷりあったので、キャリーケースをごろごろ引きながら駅までいってロッカーに荷物を預け、美術館まで行こうということになったのだが、暑い。ぎらぎらと照りつける太陽の下を歩いていくと、ある店舗のショーウィンドゥに「東京以北でもっとも日照時間が長い町、八戸市」という張り紙があった。納得。
本八戸駅から美術館まで戻る途中にある三八城神社にお参りして、道路を隔てた向かいにある休憩どころで時間をつぶす。なんでも昔は三八城の内丸のお屋敷だったとかで、管理している方から八戸市の歴史や伝統のお祭りのことなどを説明していただいた。能舞台があり、見事なお庭に茶室もありで、格式の高さを感じさせるお屋敷だった。
GOKAN巡りの3館目となる八戸市美術館は「出会いと学びのアートファーム」がコンセプト。この日も幼稚園から高校まで学校の課外活動で多くの子どもや若者が訪れていた。展示もあるけれど、見る以上に参加してアートを楽しむ企画が目白押しで、私も水で書を書くことやら、さまざまなパーツを組み合わせて顔を作るとかやって楽しみました。
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昼過ぎに八戸駅に戻り、またまたバスで十和田湖へ。
途中、奥入瀬渓谷を走るので、車窓から渓谷や滝を眺めることができた。7年前に奥入瀬渓谷を歩いた時は、ずっと雨が降っていたのだけれど、この日は晴れて木漏れ日が川面に反射してまたちがった景色が眺められた。
十和田湖畔の休屋終点からホテルの出迎えの車にのって十和田ホテルへ。湖畔に立つ立派なホテルで、なんでも天皇陛下もお泊まりになったことがあったとか。
部屋からも、大浴場の露天風呂からも十和田湖と八甲田山山系の山並みが見えて景色も満喫した。
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