観る極楽

映画はぴんときた作品だけ見ます。傑作でも大作でもなく、佳品と思える作品だけ。だからか、いつも人がまばらな映画館で、作品の世界にすっぽり包まれて過ごします。

秋葉原無差別大量殺人事件(書いているだけで悲しくなる。被害者の方々と、そのご家族のことを考えただけで涙です)の犯人が、ケータイに自分の気持ちやその日あったことを5000件以上書いていた、という記事を読んだ。

紹介されているものを読んだだけだが、感想は「なんてわかりやすいのだろう!」という驚きだ。

これを見て、ワイドショーのコメンテーターが心理学的に、社会学的にいろいろコメントをするのだろうが、あまりにも直截的表現が並ぶこのケータイの文言では、分析も評論もしようがないだろう。

これを読みながら、どこかで読んだことがあるなあと昨日雨の神保町を歩きながら考えていて、はっと気づいたのが昨年大ベストセラーになった「恋空」などのケータイ小説である。

こう言ってはなんだが、似ている。

思考方法が、表現方法が、言葉の選び方が、とても似ている。

ケータイという、短い言葉しか受け付けない媒体での表現だということを差し引いても、共通点があまりにも多い。

共通点その1、被害者意識と自虐意識満載。

なぜか(はよくわかっているのだが)ケータイ小説も、ケータイだけではないが人気を集めるブログも、イジメ体験、虐待体験、親と学校とうまくいかない、だから私はこんなに不幸、という短絡的図式が大好きだ。イジメや虐待(自分のせいではないのに......という被害者意識満載)、何をやってもうまくいかない自分をもっとおとしめる(ブスで、バカで、モテないオレ、と開き直る自虐意識)、だけどきっといつかシアワセになる。(たいていお気楽なシアワセは、ふと(ここ強調)知り合った、自分のことを何でもわかってくれて、何でも言うことを聞いてくれる、カレやカノジョによってもたらされる。

犯人が「恋人さえいたら、すべて変わる」と言ってるのを読んで、ああ、ケータイ小説の登場人物もおんなじことを考えていたよなあ、とか思った。

現実逃避に一番効き目があるのは、自分を被害者にしたドラマを書いて、自虐することだ。

共通点その2、自己愛満載

精神医学の学者だったら、誇大的自己愛症候群とかいうのだろうか、とにかく自分がかわいい、自分がかわいくてかわいくて、そんなにかわいい自分を誇示したいのに、恥ずかしがり屋で人見知りでさびしがりやだから、誰もかまってくれない。なんでこんなにかわいいオレ様をわかってくれないんだ~せけーん!! しゃかーい!!

あの、見え見えで引いてしまうんですけど。

ケータイやネットが普及する前も、コンプレックスに悩み、幼児的自己愛から抜け出せない人はたくさんいたんだけれど、それを表現する手段がなかったから、頭のなかでどんどん屈折していったのではないか。だから犯罪にまでいたったときには、自分で説明する言葉をもたず、専門家の先生方があーだこーだとアイシングした言葉で説明してくれて、それで「心の闇」だとかをわかったような気になっていたのだと思う。

ところが、だ。自己愛のはけ口となるケータイやらブログという手段を得ると、「心の闇」に照明がこうこうとあたって、その醜さも白日のもとにさらけだされるようになり、しかもそれを排斥せずに「私もだ」と受け入れる人たちが何百万といることに気づくハメとなった。カワイソーな自分、カワイイ自分を、「カワイソー」「カワイイ」といってくれる人がいる喜び。しかも、面と向かって会うというそういう人種がもっとも苦手なことをしなくてもいい。せいぜい1行、20文字程度の短い文言で同調し、わかってくれちゃう。

ケータイ小説は「わかってくれる人」が大勢いたおかげで、自己愛満足となったのだろうが(ほんとになったのかな?)、事件の犯人は「ここでも無視か!」と、今度は最悪の手段で自己愛を満足させる道を暴走した、と。

20文字で表現される内容の「心の闇」は、「早安楽」と示される目的地までの最適経路のようだ。

本当は人間はそんなに薄っぺらなものではないはずなのに。

 

あ~梅雨の晴れ間だというのに気持ちが暗い!

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motoko
 人生でたいせつなものは本とサッカーと料理とファッションに教えてもらった、などと言ってみたいモノカキの日常

PROFILE

 職業はモノカキ/翻訳業。書いていきたいテーマは「女」「子ども」「衣食住」。得意技はなんでも一晩寝ると忘れること。

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